エピローグ
霊媒師の事件が解決してから、はじめてのクリスマスがやってきた。
24日の夜、イブ礼拝がこの教会でも行われた。
私と隆さん、牧師さんは朝から大忙しで準備に取り掛かった。
今日は、特別にイエス様がお生まれになった聖書の様子を紙芝居で上演もする。
紙芝居の絵は教会の子供達が作り、声の出演は私、隆さん、牧師さんで担当する事になった。私はマリア役、隆さんはヨセフ役、語り手が牧師さんという役割分担になった。語り手といっても他に天使の声なども担当する。
参加者の蝋燭の光が灯る礼拝堂の中で、紙芝居を演じる。この蝋燭は、聖書の中で神様が「光」に喩えられている事に由来する。燭火礼拝といい、クリスマスイブには多くの教会がこの形式をとっている。
壇上の上で紙芝居なんてやるのは、ちても緊張したが、これも神様の役に立てると思うと、やる気がみなぎる。ちょっと力が入り過ぎてしまったところもあったが、どうにか最後まで演じ切る事ができた。
紙芝居が終わりると、礼拝している皆んなと讃美歌を歌う。
「諸人こぞりびて〜♪」
今日は、クリスマス礼拝のためかクリスチャンでもない人も大勢礼拝に来ていた。
向井や塚田、なんと花畑令嬢の姿も見えた。
クリスマスは、日本でも祝う習慣がでてきて最近は、ケーキなどのお祝いのお菓子を売る店も出てきているようだった。
「むかえまつれ〜♪」
初美姉ちゃんやハンスさん、三上さんの姿も見えた。初美姉ちゃんも最近妊娠が発覚し、三人目の子供を妊っていた。この町の和菓子のご主人や奥様も来ていた。二人はキリスト教には興味が無いと言っていたのだが、今日は来てくれてとても嬉しかった。
「久しくまちにし、主はきませり〜♪」
教会の子供達も大きな声で歌っている。沙里子ちゃんも文子ちゃん、太郎くんや春人くんとすっかり仲良しだった。
「主はきませり〜♪ 主は主はきませり〜♪」
聖書によるとイエス様の誕生日のはっきりとした記述は書かれていない。クリスマスは昔の土着の宗教の習慣を取り入れたものと言われているらしいが、今日ぐらい人々が命懸けで愛を示してくれた神様を意識する日はないだろう。
暗闇に浮かぶ小さな蝋燭の光を見つめながら、私の心は聖霊に満たされていた。
私の願いは、神様の御心がかなう事。
どうか、この歌が天国まで響き神様に捧げられるように。
完結です。
ご覧頂きありがとうございました。




