許さない罪-2
その夜。
すっかり榊原の影響は無いものだと思い込んでいた。いつものように隆さんと聖書を読んだり、祈ったりして布団に入ろうとした時、隆さんは急に顔を顰めはじめた。
「あなた、どうしたの?」
布団の上にあぐらをかいて座ったままの隆さんに聞く。どうもいつもと違った様子を見せていた。
「いや、何か急に…」
そう言って、気分が悪そうに頭を掻きむしっていた。いつもと違う様子に不安が再び襲う。
「榊原珠子は、一体何して来たの?」
「霊媒師がよくやるような事だよ。霊視とかいって、私の過去を言い当ててきた」
「それは私もやられたわ」
思い出すと嫌な気分しかしない。
「子供をゆうかしたのは、おまえだろう?って指摘したら、逆上してきてな。『無気力の霊を送る。お前にはまだ罪がある!』とか言って、呪って来たよ……」
「そんな……」
榊原のした事は、想像以上だった。霊媒師は、手下の悪霊を使役しているはずだ。無気力になるような悪霊を自由に使えても不思議ではない。塚田は、おそらく自殺の霊を送り込まれて、そうなった。
「明日、礼拝か。なんか、面倒だな」
「ちょっと、隆さん?本気でいってるの?」
嫌な予感がした。
いつもの隆さんと全然違う。風邪がひいても礼拝には必ず出ていた人の発言には思えない。
「あぁ、面倒だ。仕事もとても面倒くさい」
「ちょっと、どうしてそんな事……」
原因はすぐに思いつく。やっぱり榊原が、無気力の悪霊を送ったのだ。ただ、悪霊は人の罪を足場にしtr取り憑く。今、隆さんがこんな状態になっているのは、彼の中に罪があるからに他ならない。
私だって両親を許せない罪を持っていたから、夢の中で悪霊の攻撃にあった。
「隆さん、しっかりして。何か思い当たる罪はない?」
自分ではこの事は、どうしようもないと悟り、しばらく祈った後に聞いてみた。
「うーん。わからん……」
「何か恨んでいる人や許せない人はいる?」
隆さんに限って偶像礼拝や姦淫の罪を犯しているとは考えにくい。実際、聖書の教え通りに妻である私も愛してくれている。
となると両親への気持ちか、許せない気持ちを持っている事が、罪の可能性が高い。隆さんを見るところ、両親については許せ気持ちを抱えてはいないだろう。となると、誰かを恨んだり、許せない気持ちを持っている可能性があると推測する。自分は頭は良くないが、祈っていたら、閃きのようにこんな推測が頭の中に出てきた。
「ああ、花畑のお嬢さんの事かも」
「花畑?」
その名前は、向井から一度聞いた事があった。誰かはわからないが、今隆さんが話してくれるような状況ではなかった。
だんだんと目が虚になり、倒れ込むように眠ってしまった。
「どうよう……」
どうやら花畑という令嬢がこの事を解明する鍵のようだった。
自分では何をすべきかはわからない。
ただ、眠っている隆さんのそばで祈り続けた。
これが答えかどうかは、まだちぃっとわからないが、花畑という女性については調べなければならないようだ。
向井がきっと一番よく知っているから、彼に聞く事にしよう。
悪霊何かには、負けたくない。隆さんの事も子供の事も、神様の守られるよう再び祈り、ようやく眠った。




