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霊媒師編-3

 塚田に祈り方を教えた後、しばらく家事をやらせた。


 廊下や厠の掃除だ。


 書生姿の塚田は、襷掛けをしてよく動いてくれた。床掃除は、しゃがんだ姿勢が健康に良いとも聞いた事があるが、無心に単純だけど作業するをやらせるのは、余計な事を考えずに良いのかも知れない。


 私はその間に昼ご飯に食べる焼きおにぎりや味噌汁を作った。


 焼きおにぎりは片手で食べられるし、原稿を書きながらでも食べられるから良いかも知れない。西洋料理のサンドイッチも片手で食べられるから、今度作っても良いかも知れない。


 焼きおにぎりを作り終える、塚田は使っている客間のテーブルに置いておいた。


 その後、私も軽く昼ご飯を食べて教会の方に向かった。隆さんが警察に行って事情を話した事を一応牧師さんに説明していても良いと思った。


 牧師館の方の子供部屋を見ると文子ちゃんと春人くんは、絵本を読んだり、お絵かきをしていた。教会の子供達は問題無さそうである。


「二人とも、牧師さんはどこ行ったか知ってる?」

「向井のおじちゃんが遊びにきて、礼拝堂の方に行ったよ」


 春人くんは、窓の方を指差す。


「向井のおじちゃんから、クッキーもらったの」


 文子ちゃんは、嬉しそうのクッキー缶を見せた。時々向井は、教会の子供達にもお菓子やおもちゃを贈っているようで好かれていた。向井は人懐っこい性格だし、子供に好かれる理由はわかる。本人は少々子供っぽい性格というのもあるのかも知れないが。


 しかし、平日のこんな時間に向井は何の用事で教会に来たんだろうか。


 とりあえず私も礼拝堂に向かった。信徒席で牧師さんと向井は何やら話し込んでいた。


「向井さん、牧師さん。こんにちは」


 私は二人に挨拶をした。


 今日の向井は、洋装姿で帽子をかぶりメガネもかけていた。おそらく仕事の帰りだろう。野暮ったいメガネをかけてちょっとした変装しているのがわかった。


「向井さんは、どうしたんですか。こんな時間に」

「いえ、ちょっとした問題が起きてしまいましてね」


 向井ではなく牧師さんが代わりに答えた。私も信徒席に座って、どういう事か事情を聞いた。


 最近、教会に嫌がらせの手紙が相次いで届いているそうで、向井に犯人を見つけるよう依頼しているという事だった。


「嫌がらせの手紙だなんて」


 信じられないが、キリスト教にあまり良い感情を持っていない人がいるのもわかる。


 その手紙を見せて貰うと「子供を誘拐している」「神隠し」とい言葉が踊っている。雑誌の切り抜きと新聞で作った手紙のようだったが、明らかに脅しているのがわかる。思わず顔を顰めてしまう。


「なんなの、この手紙……」


 不気味としか言いようが無い手紙だった。しかも誘拐という言葉もある。この事は子供が居なくなった事と関係あるのだろうか。


「放って置いてもよかったんです。よくある事ですしね。でも町で子供が居なくなった事を考えるとね……」


 牧師さんは私以上に渋い顔をしている。この事は、霊媒師や生贄と関係しているのだろうか。あんまり考えたく無いが、あまり良い気分はしなかった。


「向井さんは、犯人わかる? あの霊媒師?」


 向井に話をふる。向井は私達と打って変わってニヤリと笑っていた。八重歯を見せて、少々子供っぽくもあるいつもの笑顔だった。


「いや、霊媒師の拠点をようやく掴めた。火因村の神社の社務所が、あの女のアジトみたいだ」

「ちょっと向井さん、大丈夫?そこまでして何か反撃あったりしない?」

「志乃さんの言う通りですよ。危険な事はやめて下さいね」

 私達が心配しても向井は、余裕の笑みを浮かべていた。

「大丈夫、大丈夫。そんな事より子供達や嫌がらせだろ。それに警察も役に立たないしな」


 その点においては、向井の言う通りだった。


 向井はこれから町の商店街の行って聞き込みをするという。自分もちょうど買い物するところだったので、途中まで向井と一緒の行く事にした。


 夏実さんの件もあり二人で歩くのは、あまり良い気はしなかったが、嫌がらせの事など向井には聞きたい事があった。

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