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偶像崇拝編-7

 その夜。


 塚田は隆さんから聖書を教えて貰っているようだった。

 雑誌作りや新作執筆で忙しいな中、親身になって教えているようだった。もちろん無償だ。こんな事は愛が無いと出来ないとも思う。


 私は、雑巾を縫ったり生まれてくる子供の為の産衣や前掛けを縫っていた。少し気が早いかもしれないが、こうして針仕事を黙々とこなしているち、気分も変わる。明日、塚田には雑巾掛けや庭掃除でもやらせようと思う。もう悪い事をする可能性は低いが、単純作業をやらせておけば、悪い考えもあまり浮かばないかもしれない。


 針仕事を終えると、風呂に入り、寝室の布団を敷く。聖書を読みながら、隆さんが塚田の聖書勉強をおえるのを待った。


「ハァ、疲れた。塚田のやつ、意外と熱心に質問してくるなぁ」


 そうぼやきながら、隆さんは寝室に入ってきた。


 私は布団の上で座って聖書を読んで居たが、隆さんは疲れた様子だった。私の隣に座ると、欠伸もしていた。


「おつかれ様です。塚田さんの様子はどうでしたか?」

「いや、アイツはもともと親が耶蘇教の信徒だったと言っていたよ。本人は、子供の頃は興味なかったと言っていたが」

「そうだったの?だったら、意外と受け入れやすいかも知れないわね」

「まあ。親はカトリック教徒みたいで、マリア崇拝が気持ち悪くて、塚田は信仰を持てなかったそうだが。ただ、聖書はかなり面白がって読んでくれたね。特に詩篇が美しいと大絶賛さ」

「それはわかるわ」

「ああ。でも作家で詩篇の美しさがわからなかったら、それはそれで問題だよな」


 そう言って、隆さんはちょと苦笑していた。確かに詩篇はダビデが書いたとされる美しい祈りや賛美がたくさん入っている。読んでいるだけで勇気を貰えるものもあれば、悔い改めしなければと罪を解らせてくれる物もある。単純に言葉自体も美しいので、本好きな人は入りすやすい所かもしれない。


「私も詩篇を読ん読んで作家になろうと思ったんだよ」

「本当?」


 そういえば隆さんが作家になった理由はなん聞いた事のない話だった。


「うん。神様は本当に凄いなと思ってさ。私も言葉で何か、美しい気持ちや風景を表現したくなった。まあ、私は文章力はそんなに無いがな」


 隆さんは、ちょっと肩をすくめて頭をかいていた。


「そんな事ないわよ。あなたにだって神様が才能を預けているわ。まあ、賜物は信仰心や聖書を理解する力のあるだと思うけど。私の賜物は何かしらね?」


 聖書には、信じるものに神様から賜物を受け取れるという箇所があるが、私じゃ何がそうなのかよくわからなかった。


「志乃は奉仕の賜物だよ。本当、よく教会の為の働いてくれている。本当、私は頭があがらないよ」

「そうかな?」


 自分ではわからない。教会の為に働くのはとても楽しい事で、苦労では無い。


「そうだよ。賜物は、神様や教会のために使わないとな」

「でも、私は讃美歌は上手く歌えないのよね。声が悪いのかしら」

「そんな事ないさ。讃美歌は気持ちが何より大事だしな。ちょっと小さな声で練習してみるか?」

「じゃあ、ちょっとだけ……」


 もう夜なので、本当に小さな声で讃美歌を歌ってみた。この教会の信徒の中には、作曲ができる人がいて、讃美歌を作っていた。その人が作った讃美歌を歌ってみた。


「主はよいお方〜♪ 人間を創り〜♪ この上なく世を愛された〜♪」


 ちょっと音程などはずれていると思ったが、歌っているととても幸福な気持ちになる。


 そもそも人間は神様を讃美する為に作られた。石や木や悪魔を拝む為ではない。偶像崇拝すればするほど心は虚無になるだろう。逆に神様を褒め称えっれば幸せになれる。神様はそういう風に人間を創った。


 讃美歌っていると自分の願いの願いなどどうでも良くなる。そうではなく、神様の願いを叶えたいと思う。神様は悪を憎むから、同じように悪を憎みたい。神様は弱いものに優しいから、自分も弱いものに優しくしたい。神様は敵も愛しているから、自分も敵を愛したい。そんな事を考えてしまう。


 歌え終えると、隆さんは拍手をしてくれた。


「いや、十分うまいよ。気持ちが伝わってくる」

「ほんと?」

「うん。讃美歌は気持ちが一番大事だからね」

「神様に届いているといいな」

「天国行ったら一日中、讃美だぞ」

「なにそれ、とっても幸せそう……」


 そんな事を話しつつ、今日は聖書のレビ記を隆さんから教えて貰った。


「レビ記ってちょっと日本の神社みたくない?」

「ああ、そうだな」


 隆さんは、日本の神社とイスラエルの民と共通点がある「日ユ同祖論」を教えてくれたが、難しい内容で瞼が重くなってくる。


 いつの間にか寝てしまっていた。


「おいおい、志乃」


 遠くの方で隆さんの呆れ声が聞こえてきたが、眠気には勝てなかった。

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