偶像崇拝編-5
春美さんが居なくなると、塚田はちょっと落ち着いてきたが、それでもやっぱり様子が変だった。
「あー、もう僕はもうダメだ。死にます」
再び悲しい事まで言っている。
「隆さん、この塚田さんの様子はどう言う事だと思います?」
「そうだなぁ。おそらく霊媒師に死の悪霊を憑けられたんだろう」
「死の霊? そんなものあるの?」
この話も初耳だった。
「うん。貧困の霊、反キリストの霊、病気の霊とかあるね。多くは罪を犯すと入るものだけど、霊媒に関わったのは不味かったなぁ。悪い霊いっぱい憑けて帰ってきても不思議じゃない」
隆さんは、深いため息をつく。
「でも、霊媒師に見てもらって具合が良くなった人もいるけど、それは悪霊に力?」
「ああ。ああいった占いや霊媒の側には、惑わしの悪霊が動いているから一見よい事も起きるんだ」
「なんで?」
「悪魔が、イエス様を信じさせなければそれで良いからな。人に崇められたいという願望もある。光の天使に偽装するわけだ」
「なるほどね。本当に怖いわねぇ。霊媒なんて」
そうは言ってもあまり怖くはない。それよりも遥かに強い神様が側で見ているという安心感の方が優ってしまった。
悪魔や悪霊は人間の事など愛していない。願いが叶ったとしても、最終的には地獄につれて行かれる。私達は逆に神様の御心に沿って、神様が願う事をしたい。
もちろん、日々のちょっとした願いごとはあるものの、神様の願われている事の方が重要だ。それに願いが叶わなくても神様が願われて居ない事だったら、諦めがつく。自分にはその器はないという事だ。
「まあ、仕方ない。志乃、塚田の為に一緒に祈ってくれるか?」
「ええ。もちろんです」
私と隆さんは、手を組み声を揃えて祈り始めた。
天のお父様
イエス様
今、塚田を攻撃している全ての強い人と汚れた霊を縛り、イエス・キリストの御名においてお前を叱る。
私達は主イエス・キリストと共に、いと高き天に座しており、その場所からお前を攻撃することをサタンに宣告する。
全ての魔術、偶像崇拝、占い、死者との交霊、霊媒師に相談した時に入った霊よ、イエスの御名で出ていけ!
全ての死の霊を縛って叱り、オカルトで思考を縛る霊、思考を麻痺させる霊、イエスの御名で出て行け!
父なる神よ、イエス・キリストの御名によって、悪霊の陣地で全ての悪霊たちに同士討ちをさせてください。
全ての悪霊たちに、イエスの御名で神の火を放つ。
全ての悪霊にたちに、イエスの御名で、燃え立つ火による滅ぼしを放つ。
全ての悪霊たちに、イエスの御名で神の恐れを放つ。
悪しき霊をイエスの御名で叱り、イエスの御名で出て行くように命じる。
どうか塚田とその家族、私達をお守りください。イエス様の尊い御名で祈ります。アーメン。
「あれ? 僕は何してたんだ?」
塚田は、けろりとした表情を見せて居た。さっきまでの鬱々とした顔でがなく、まるで憑き物が落ちた様だった。
この場の空気もすっきりと清らかなものに変わっていた。やっぱり塚田に悪霊が入り込んでいたようだった。
「なんかわからないけど、腹減った……」
塚田のお腹から情け無い音が響く。どうやら、今のところは大丈夫そうだった。
「何、この鯛ご飯?何かのお祝い?」
塚田は、明るい声を上げながらちゃぶ台の上にある鯛ご飯を見つめた。
私達夫婦は、安堵のため息をついた。
「じゃあ、夕ご飯にしましょうか」
「そうだな」
食前の祈りを捧げ、夕ご飯を食べ始めた。
驚いた事に塚田は、私達と一緒に食前の祈りを捧げていた。




