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誘拐事件編-4

 ハローウィンマは、古代ケルトの収穫をお祝いするお祭りだと言う。


 毎年10月31日に祝うお祭りだが、問題があった。


 収穫のお祝いというのは表向きで、実際はサウィン祭という悪魔を崇拝するお祭りだ。理由はわからないが10月31日は、悪魔のいる霊界とこちらの現世世界と繋がりやすいらしい。


 古代のサウィン祭では、信じられない事に子供を生贄に捧げていた。生きたまま火をつけて殺し、悪魔を喜ばせていたという。そうする事で悪魔に願いを叶えてもらったり、人智を超えた力を得て成功する支配者層がいると隆さんから説明くれた。


 もうすっかり夜がふけ、私達は寝なければいけなかったが、こんな話を聞いてしまい、寝室では灯りをつけっぱなしで起きていた。


 布団の上に座り、隆さんからハローウィン祭りに関わる本を渡される。全部英語で書かれた洋書で、あまり読めなかったが、このお祭りがキリスト教とは全く関係のないものだとわかる。翻訳家だった父が生きていれば、この本も訳してくれそうだが、学校で英語を教えている隆さんはスラスラと洋書を読んでいた。


「そういえば聖書でも生贄について書かれていたわね……」


 私は呟くようにいう。


 生贄はもともとは、罪の犠牲で罪の無いものが捧げられるという意味だった。旧約聖書ではその為に動物が捧げられている場面がある。


 ただ、新訳聖書では、そう言った行為は必要なくなる。神の子供であるイエス様が、十字架で生贄になり犠牲になったので、もうこれ以上の生贄はない。イエス様を心から信じて悔い改める事によって、その恵みを今でも受け取れる事ができた。


 問題は、それ以外の生贄贄である。神様ではなく悪魔に捧げられる生贄で、神殿で性的な乱行をしたり、子供や処女を焼き殺したり、その血肉を食べる事だ。


「そういえば、私も神社でインキュバスの生贄として捧げられたけど、何か関係ある?」


 隆さんは眉間に皺を寄せつつ頷く。あれも悪魔に力を貰う為にやっていた事だという。日本では、こう言った生贄儀式が盛んで、人柱と言って建物を作る時に人間が捧げられる事も多かったという。白羽の矢が立つという言葉も生贄が起源だと説明してくれた。


「本当、私何でインキュバスから助かったのかしら。あの悪魔に食べられてもおかしくなかったのに」

「まあ、インキュバスは淫魔だからな。単に殺すより性的堕落をさせた方がいいんだろ」


 龍神というかインキュバスの所にいた記憶は、ほとんど消えてしまっていたが、どうにか思い出せそうな所を思い出す。


「そういえば、インキュバスのやつ、子供を食べていたんだけど……」

「本当か?」


 思い出してゾッとしてしまった。子供の死体を食べていた。


「おそらく、生贄儀式で捧げられた子供の死体を食べてたんだろう」

「幻の映像でもそうなの?」

「ああいった霊的な存在は、そこに宿る力、感情などを門にして現世と繋がるからな。生贄で殺された子供の間感情などは、奴らにとってはご馳走みたいなものさ」


 難しい話で頭はついていかなかったが、生贄を捧げる事で悪魔連中の力が増す事は理解できた。


「この町の子供達が行方不明になった事と何か関係あるのかな?」

「わからない。でもあると思う。ちょうどハローウィンだ。当日の子供を捧げる可能性がある。

「そんな……」


 想像すると怖くなってしまい、隣にいる隆さんの寝巻きの袖を掴んでしまった。


「沙里子ちゃんも生贄目的で誘拐されたの?」

「その可能性もあると思う」

「どうしよう。早く警察に言わないと」

「でも、こんな話を警察が信じてくれるかどうか」

「そんな……」


 目の前が真っ暗になってしまう。警察が取り合ってくれなければ、誰に言えばいいのだろう。


「とにかく教会の子供達に気をつけるように言っておこう。あとは、志乃も子供の様子はこまめに見るように」

「わかったわ」


 私は深く頷く。


「あとは、何をすれば良い?」

「とにかく不審者には、注意だな」

「そうね。わかった」


 不安しか感じなかったが、隆さんにこう言われてだんだんと安心してきた。


「祈ろう」

「わかった」


 しばらく二人で子供達の事を祈っていた。悪魔に捧げる為に子供を誘拐しているなんて悲しい話だが、祈っているとだんだん安心してきた。


「まあ、何か有ればすぐうちの親父か、塚田に言うんだよ」

「塚田さん?」

「ああ、さっきちょっと話して志乃の事もお願いしてきた。あいつは意外と体力があるらしい。空手の黒帯だってさ」

「嘘、そんな風には見えないわね」

「まあ、人は見かけによらないのかも知れんな。さっき、聖書の事を教えたら、けっこう熱心に聞いてくれた」

「意外ね。でも良かったわ」

「ああ」


 こうしてすっかり安心した私はいつものように眠りについた。

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