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男の言葉には説得力を感じる。僕は彼女と目を合わせて確認し合う。お互いすぐに頷き、彼と彼の恋人に顔を向けた。
すると、彼の恋人が突然深いため息をついた。
こんな役目、したくはなかったのよ。
そう言いながら洋服の内ポケットから取り出した銃を構えて彼に向けた。そのまま一歩ずつゆっくりと後退をして距離を取っていく。
いつの間にか彼の恋人の背後には多くの人が集まっていた。みんなが私服を着ているけれど、その目つきが普通じゃないのは分かる。
ごめんなさいね。あなた達を生かすことは出来ないのよ。本当ならグループの本部まで連れて行ってもらいたかったんだけれど、仕方ないわよね。あなたが現れてしまうとは予想外だもの。
彼の恋人はそう言うと、その銃を男に向け直した。それと同時に背後の全員が銃を取り出し僕達に向けて構える。
その銃は、全てが短銃だった。
そうかい、街の様子がおかしいって聞いて来たんだが、正解だったようだ。
男はそう言うと、笑った。
俺だって馬鹿じゃないんだ。それくらい知っているだろ? お前は確か、アンナだったっけか?
男はそう言いながら足でビルの壁を蹴った。
ぐらっと揺れる建物。彼の恋人が立っているすぐ隣の壁が崩れ落ちる。
早く! 逃げるぞ!
男は反対側のビルの裏口に入っていく。
一つの壁が崩れ出すと、建物全体が崩壊を始めた。慌てる彼の恋人の頭上に崩れた壁が落ちて来る。危ない! 思わず僕がそう叫んでしまった。
僕と彼女はすでに裏口に辿り着いていた。彼も走り出していたけれど、僕の言葉に足を止めて振り返る。そして素早く彼の恋人に覆い被さった。