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権力者の街には警察官も多く在中している。警察官は一般市民の街で暮らしていて、大した仕事はしない。彼女が受けた注意も、規則だから怒られたに過ぎなかった。警察官は、都合のいい規則を押し付けるのが仕事らしい。これもまた彼女の主観だ。
彼女が街中で若者を突き落としたときのことだ。一人の警察官に見られてしまい、そのまま逮捕されたことがある。逮捕といっても三十分ほどで釈放されている。どうやら彼女の名前には力があるらしい。
彼女を逮捕した警察官が、グループと繋がりを持っていた。彼女なら同志になるとでも思ったのだろう。一般市民の街の裏側で起き始めている現実を教えてくれた。
この世界は狂っているなんて言われたけれど、そんな当たり前のことを偉そうに言われてもこっちの方が困っちゃうわよ。
彼女の言葉は、いつだって正しいのかも知れない。そして彼女はこう話を進めた。
けれどあの警察官は、私が知らないことまで教えてくれたのよ。狂った世界の狂った真実なんて、知らない方が身のためだっていうのに。
彼女が知った真実を聞いた僕だけれど、正直頭が混乱している。彼女が嘘つきだったらいいのになんていうおかしな感情が湧いている。そんなはずはないし、もしもそうなら僕が惚れるなんてことはありえない。
簡単に言ってしまえば、僕は半分ロボットってことだ。人造人間? 眠りの世界の中で見た映画やアニメのようではあるけれど、それは少し違うようでもある。人工人間。それが一番しっくりくるそうだ。