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彼女がそのグループと出会ったのは、僕と出会う前のこと。といっても直接的な出会いではなく、今でもまだ会ったことはないという。
一般市民の街の住人は、権力者の街に顔を出すことがある。権力者はお金が好きだ。お金持ちを利用して生きて行くのが権力者のやり方だ。権力者もまた、自らはなにも生み出せない。いいやそれは違うかも知れないと、彼が口を挟んでこう言った。戦争を生み出しているのあいつらだ。確かにそうかもねと彼女は同意する。
この世界での権力者は政治家のことを指す。官僚と呼ばれている公務員も含まれている。
彼女はそんな両親の元に生まれたことを恥じていて、街ではよく悪さをしては警察のお世話にもなっていたそうだ。
彼女の悪さは物を取ったり誰かを傷つけたりするわけではない。ただ少し、いたずら程度に嫌味な人間を攻撃する。
どこの街にも差別は存在する。権力者同士にも地位の格差があるっていうんだから笑えてくる。
それは当然子供達にも影響を与える。地位の高い家の子が低い家の子をイジメる。彼女はそれを見るのが嫌いだった。権力者の街には僕が見る眠りの世界と同じような学校が存在している。学校ではお昼に給食が出る。それも僕と同じだった。給食のメニューがいじめっ子の大好物の日に事件は起きた。彼女はいじめられっ子の食事に大量の辛子を混ぜ込んだ。飲み物として出されている牛乳には液体の唐辛子を投入する。いじめっ子は俺によこせと大好物を奪い取る。その辛さに悲鳴をあげ、まずは自分の牛乳を飲み干した。すると予定通りにこれもよこせといじめっ子の牛乳を奪い取り一気飲みする。結果は想像を超えていたそうだ。いじめっ子は喉を押さえていて、口から火を吐く勢いだった。慌てるいじめっ子はに対して彼女は言った。水飲み場はあっちよ。彼女が座るテーブルの横を駆けて過ぎる瞬間彼女は足を伸ばした。彼は勢いよく躓き、お代わり用の給食が残った大鍋に突っ込み、まだ温かい大好物を頭から被った。
僕は驚いたよ。お代わりが残っているのに奪い取ったいじめっ子の浅ましさに。
外の街で地位の低い大人をからかう若者も多くいるという。そんな光景を見ると彼女は我慢が出来なくなり、階段から突き落としたことも何度かあったそうだ。