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一般市民の街との境界線は、見なくても分かる。そこに多くの軍人が立っている。しかも全員がライフルを構えている。
それは僕達に向けての仕様ではない。普段からそうしているらしい。
だから当然、僕達仕様の軍人も待ち構えていた。境界線上ではなく、左右と背後にビッシリ軍人が詰まっている。
いつの間に囲まれていたのか、僕も彼も気がつかなった。
私は見てたよ。
どうやら彼女だけは見ていたようだ。僕の背中でキョロキョロ目玉と首を動かしていた。
ちょっと前から怪しい影はちらほらと動いていたらしい。姿を見せることはなかったけれど、誰かが後をつけていることは感じていた。彼女はなかなかに鋭い。顔を向けていたとはいえ、僕達が気がつかなかった気配を感じ取るのは凄いことだ。その姿を一気に表したのは、僕が彼の恋人にぶつかった瞬間だった。一瞬の隙を逃さないのが、暗殺者の習性だ。
どうやって乗り越えればいいのか、僕には分からない。全員を倒す必要があるとしたら、それは難しい。ざっと見回しただけでも五十人はいる。時間も相当かかるだろう。
境界線さえ越えればいいのだろうか? 境界線には壁がある。天井まで伸びた壁だ。その壁に一つのドアが見えるけれど、その向こうに行けばゴールなのか? そこでは誰も銃を構えて待っていないのか? そうだとしたら勝機はある。まずはあのドアを開ければいい。そして中に突っ込んでいく。その間に殺されなければ勝ちっていうわけだ。