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結婚って、どうすればいいの? 結婚っていう言葉に憧れはあった。けれど、どうすればいいのかが分からない。というか、そもそも結婚がなんのかが分かっていない。
戦争しか社会経験のない僕だ。結婚についての概念は学んでいない。両親とも会った記憶がないんだ。当然のことだ。
けれど僕には眠りの世界がある。そこで結婚について知ったことがある。好きな人と一緒に暮らすこと。それが結婚だ。それだけで人は幸せを感じる。世界中が結婚をすれば平和になれる。本気でそう感じている。
あなたと一緒にいたいから、私は覚悟を決めたのよ。今の世界は間違っている。変わるなら今しかないって感じているの。大丈夫。あなたと私がいれば、世界は変わっていく。
彼女はそう言いながら僕の背中から降りた。
俺達もそう思うよ。だから話に乗っかったんだ。俺は丁度行き詰まっていたし、恋人は出会った当初からこの調子だ。
彼が彼の恋人に顔を向ける。
私がなんだって言うのよ!
彼の恋人は笑顔で彼の肩をグーパンチした。彼は大袈裟に蹲ってみせた。痛いっていう言葉そのものが痛々しい。
私は一般市民の街出身だからね・・・・
彼の恋人は言葉を詰まらせて突然足を止めた。
僕が彼の恋人の背中にぶつかる。
彼の恋人は少し前のめりになりながらも転ばずに歩みを止める。
彼は前のめりに転んでいた。