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 二度に渡る襲撃も、軍人ではあるだろうけれど、味方か敵かも分からない。なにか証拠を得るために尋問でもするべきだった。少なくとも内ポケットを探るくらいはする時間もあった。そうしなかった理由はなんだ? 彼達は、敵の正体を知っている。少なくとも彼女は知っていることだろう。

 支配者の街って言うけれど、なにを支配しているんだ? 街を歩いただけでは分からない。そもそも誰ともすれ違っていない。景色は穏やかだったけれど、今思えばほんの少し嘘っぽさが漂っていた。眠りの世界で見る映画の世界に迷い込んだ気分に近かった。

 さぁ、そろそろだな。

 彼が久し振りに声を出した。

 四人組に襲われた後から、僕達は誰一人として口を聞いていない。背中の彼女に至っては、いつの間にか眠っていた。そして今でも睡眠中だ。余程疲れているか、何度かイビキ耳元に、ため息が首筋に触れていた。

 もうすぐ一般市民の街に入るわよ。

 彼の恋人は、声を震わせている。

 これでやっと長旅も終わりってわけだな。

 僕がそう言うと、彼と彼の恋人は鼻で笑う。

 お(あなた)になにが分かるんだ(の)よ!

 二人の揃った声が聞こえてきた。ような気がする。

 この先には絶対に敵が待っている。それは間違いない。元々一般市民の街への境界線には規制が敷かれているんだ。

 一般市民の街にか? なんの理由があってだ? 一般ってなんなんだ? 普通は普通って意味だろ?

 よく分からない言い回しを真顔で言っている自分に気がつき、おかしなってしまった。言った直後に噴き出すように笑った。

 そんな僕の様子を二人は背中を逸らせて遠巻きに眺めている。

 うふふふっ、なんていう妄想の世界でしか聞いたことのない笑い声が背中に響く。

 僕はその声に首を曲げて顔を向けた。

 あなたと結婚を出来るなんて、こんな幸せないわよね。

 不意打ちは人を狂わせる。僕の方こそ幸せだよ。そんな言葉が自然と出ていく。恥ずかしさを感じていないことが恥ずかしい。

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