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 これで終わるはずはないわよ。あの軍服、まだ若いわ。

 そう言ったのは背中の彼女だった。僕達の目では、軍服なんてみんな同じに見える。部隊ごとの違いは多少あるけれど、年度別の違いなんて分からない。確かにそういった噂は流れている。毎年少しずつマイナーチェンジをしているっていう噂だ。お偉いさん方には見分けがついているようで、新米だった頃に若いのに大活躍だなと、遠目からの声を聞いたことがある。軍服はボロボロで、顔は泥だらけだった。しかも僕はベテランに混じってもいた。動きで分かったのかも知れないけれど、そうじゃなかったようだ。あれは何年生まれですよ。なんて別のお偉いさんが言っていた。

 違いが分かるんだねと僕が言うと、彼女はこう言った。

 商売をしていると、自然に目が行くのよ。そんなには目立たないけれど、気に留めていると遠くからでも気がつくものよ。

 そうなの? それってどこを見れば分かるの?

 そう言ったのは僕だけれど、彼も興味がありそうだった。

 やっぱり軍人って、そういうところには無頓着なのね。まぁ、年齢の違いなんて戦場では無意味なんだけれど。

 彼の恋人は、鼻で笑いながらそう言った。

 胸の番号があるでしょ? よく見るとなにかに気がつかない? 数字以外のものがあるでしょ?

 その言葉は軍服を着ている彼に届けられた。

 ひょっとしてこれのことか?

 彼は自分の番号に顔を向けながらそう言う。

 左から四番目の数字の後に点がある。しかもこれだけ色が付いているな。

 そうなのよと、彼の恋人が彼に顔を向けた。そしてその点を指差した。

 その色で識別しているのよ。

 なんてことを言われても、ピンとこない。識別番号なんて、気にして見ることは少ない。見たとしても下三桁だけだ。呼び合うときはその番号しか使用しない。十八桁もある番号を一々全部述べていては会話にならないからだ。

 点があることには気が付いていた。その前の四桁の番号はみんなが似たような数字だっていう認識もある。けれど、点の色なんて気がつかなったよ。

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