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彼は教官として少なからずこの世界を見ていた。本来なら何処かで命を落としていた筈だけれど、彼は死ななかった。実際に彼は強い。教官をしている際には普通でも行かないような危険地帯にも行かされている。けれど死ななかった。暗殺者を仕向けられたこともあったようだ。
僕の知らない世界を見てきたにも関わらず、普通でいられたことが驚きだ。正直僕は、今更元には戻れない。戦場で軍人として戦うことはもう、出来ないだろう。
教官としての仕事は、基本的には普段と変わらないけれど、外の世界と触れ合う必要が多々あるそうだ。僕達がいた建物のように物心ついてからずっと同じ街で暮らしている軍人だけじゃないようだ。普通の家から軍人になることも他の街ではある。市街地が狙われることも実際にはあるようで、彼はそんな場所にも足を運ばせていた。見るべきじゃない世界の真相も自然と見えてくるようだ。特に彼のように優秀だと尚更だろう。
それに加えて彼には恋人がいる。まぁ、軍人達にはほぼ百パーセントの確率で恋人がいるわけだけれど、彼の恋人は僕も知っているように特別だ。なにが特別なのかは、三人の会話では触れていなかったけれど、少し後に僕が直接彼から聞き出した。
お前はなんにも知らないんだなと笑われたけれど、知っている方が少ないと思う。世の中かなんてそんなものだ。知らないことの方が断然多い。自分は多くを知っているつもりでいても、外から見ればなにも分かっていないと思われることは意外と多い。彼だって、僕よりは知っているってだけで、さほど多くは分かっていない。
けれど、僕が聞き出した事実は、大抵の軍人が知っていると言う。地下空間に何度も通っていれば気がつくそうだ。例え気がつかなくても、おかしいとは感じる。そう感じれば調べるだろと言われた。特に隠していることではないようで、調べればすぐに分かるそうだ。




