表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/130

69

 彼女がなぜ支配者の街で暮らしているのかは教えてくれない。しつこく聞くことは出来たけれど、意味がないことは承知している。教えたくないことは誰にだってある。まぁ、僕にはないんだけれど。

 街から街への移動の際、彼女は小まめにリップを一つ取り出して唇に塗っていた。外側は緑で白いキャップのついた透明なリップだった。僕も使うことはあるけれど、冬場の乾燥を防ぐためだ。この季節には使うことはない。

 それってなにか意味があるの? 僕がそう言うと、女の嗜みよと笑顔を見せながらそう言っていた。

 支配者の街は安全だと、僕は勝手に思っていた。これで僕は自由だ。そんな油断が崩れるのは早い。

 ジジジジッという物音が僕のポケットから聞こえてくる。

 それがなんの音なのかはすぐに分かる。僕達は普段からその音には敏感なんだ。僕自身が持つことはなかったけれど、そこから聞こえてくる声は重要だ。戦争での生き残りがかかる大事な局面に聞こえてくることが多く、その言葉に戦局が大きく左右されるからだ。

 ズボンの内ポケットに忍ばせていたトランシーバーを出すと、誰かの声が聞こえたけれど、一瞬で消えてしまった。

 僕はボタンを押して声をかける。

 もしもし! 応答願います! どうぞ!

 周波数が合っているのはおじさんに預けたトランシーバーだけだ。彼の手に渡ったかどうかは不明だけれど、僕は彼の声を期待する。

 やっと繋がったな! どうぞ!

 期待通りになるのは嬉しいものだ。自然と声が弾んでしまう。

 こっちこそやっとだよ! どうぞ!

 素直な言葉だった。

 彼とのやり取りは手短だったけれど、彼女のサポートで僕は彼に会うことが出来た。

 すぐに部屋を出るように言われた。行き先は地下の秘密基地。追っ手はもう迫っている。彼女の行動は素早かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ