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そこには外の世界が広がっていた。広場のど真ん中のような空間だったけれど、その空気が今まで感じていたのもとは別格だった。なんというか、清々しい気分になる。戦場のある街とは違う。それが見た目だけじゃないんだと思い知った。
戦場のある街は、どんなにいい天気でもその空気が薄暗く澱んでいる。
さぁ、ここからは急がないとね。
外に一歩を踏み出した彼女がそう言う。僕も続けて外に出る。
それではごゆっくり!
そんな声と共に背後のドアが閉められたのを感じる。
えっ!
思わず大きな声が出る。振り返った先に、ドアがない。僕と彼女は本当に広場のど真ん中に立っていた。
驚く気持ちは分かるけれど、これがこの世界の普通なのよ。
彼女はそう言い、僕の手を引っ張って歩き出した。本当に手術を終えたばかりなのか? とても傷を負っているようには感じられない。完治しているとしたら、あまりにも早すぎる。
彼女が向かう先は決まっているようだった。少しの迷いもなく歩みを進める。
僕はそれに従うしかなかった。基本的な構造は同じかも知れないけれど、戦場のある街とは大違いだった。どちらかと言えば眠りの世界に似ていると感じる。
電車に乗るのもタクシーに乗るのも初めてだった。この世界にも存在していることにすら驚いた。当然のことだけれど、ここには僕が知らない世界がまだまだあるんだと思い知らされた。
彼女は自分の家に向かっていた。その家に着くまでに二時間を要していたけれど、僕にはあっという間に感じられた。
初めての経験は、大抵が楽しい。