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 君たちはついているな。

 戻って来たおじさんは少し訝しげな表情をしていた。

 病院に向かう手筈が整ったそうだ。どういうコネを使ったのかは知らないが、気をつけることだな。君は軍人だろ? 何度か街で見かけたことがある。

 おじさんが何者なのかは分からなくても、軍人でないことは理解が出来た。まずは見た目が最古参の僕よりも老けているってこと。それから、白衣を着ている軍人は見たことがないのと、街を何度も彷徨くようなお偉いさん方なんてあり得ないからだ。

 お偉いさん方は、戦場のある街を歩かない。ロケットなどの装備を搭載したヘリコプターで移動するだけだ。

 あなたは誰だ? 素直な思いが口に出てしまうこともある。

 私はこの街の医者だよ。この格好を見れば分かるだろ? あぁそうか・・・・ 君はこの街から外に出たことがないんだね。軍人さんは、医療部隊でさえ白衣は着ないからな。

 医者が白衣を着ることは眠りの世界で知っていた。医療部隊は確かに白衣を着ないけれど、それは戦闘員を兼ねているんだから当然だ。僕は単純に、このおじさんが何者なのかを知りたいだけだ。

 そんなことを聞いているんじゃない。あなたは軍の関係者なのか?

 ・・・・まぁ、全くの無関係ってことはないがね。直接的には無関係だ。私は普段からこの街で暮らしているんだ。すぐそこの雑貨屋が私の店だ。当然別の街にも家がある。以前はそこで町医者をしていたんだ。ここでの業務はボランティアってところだな。

 おじさんの言葉をどこまで信じていいのかは分からないけれど、疑っても意味がない。

 彼女の店にある電話に、誰かからかかってきたことは一度もなかった。彼女が誰かにかける姿も見たことはない。けれど、客が来ていると分かっていての大きな独り言は、通常では電話以外にあり得ない。まぁ、極限状態の軍人は別だけれどね。追い込まれた人間はよく喋る。木や建物にだけでなく、ライフルにだって話しかけるんだ。まともな人間は本当に一人のとき以外には独り言なんて言わないんだよ。電話をしている姿は傍目には一人きりだけれど、線の向こうには誰かがいるんだ。初めは驚いたけれど、見慣れればどうってことはない。ただ、眠りの世界では最近になって大きな独り言で歩いている人間をよく見かけるようになった。狂った人間が増えたからなのだろうか? 見た目だけでは分からないことも多いんだ。特に眠りの世界では。

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