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 ちょっと電話をかけたいんだが、いいか?

 彼は僕にそう聞いた。僕の電話じゃない。いいも悪いも言わず、勝手にしてくれと言った。とにかく早く彼女を助けたい。

 お店の電話は誰でも自由に使用が出来る。といっても、かける場所なんて殆どない。軍の施設にかけるくらいだ。後は恋人から渡された番号があるけれど、僕はかけたことがないし、他の誰かがかけたという話も聞いてはいない。

 あぁ、俺だよ。ちょっと厄介なことになったんだ。助けてくれないか? ・・・・あぁ、大丈夫だ。今からそっちに向かう。

 誰と話したんだと聞く前に、彼が口を開いた。

 俺はお前が知らない真実をほんの少し知っている。そこの子はもっと知っている筈だけどな。

 彼は横になっている彼女を顎で指す。彼女はうつ伏せたまま眠っているようだ。

 今すぐ行く、ついて来な。

 彼は店を出て行く。手にはもう一つのトランシーバーと彼女の黒い手提げカバンをぶら下げている。僕はトランシーバーを上着の内ポケットにしまい、彼女を持ち上げたそのままの格好で、右肩に乗せる。まるで死体の運び方だなと思っていたら、実際彼にそう言われた。

 一旦俺は家に戻る。お前はどうする? 一緒に来ても構わないが、待っているのはどうせ修羅場だ。先に訓練場に行くことを勧めるよ。

 なんだ? 一緒に行くんじゃなかったのか? っていうか僕はなにも聞いていない。家に戻るってことも、訓練場に行くってことも初耳だけどな。

 そうだっけ? 首を捻りがら彼はそう言った。

 結局はばっくれるってことか?

 正直それでもいいと感じている。彼女の治療さえ済ませれば、後はどうにでもなるから。僕は元からそのつもりだった。

 どう捉えても構わないよ。まぁ、俺は裏切らない。なにがあってもだ。それだけは疑うなよ。

 彼はそう言いながら彼女の黒い手提げカバンを僕に手渡した。

 トランシーバーの周波数はお前の方で合わせて置いてくれ。

 彼はトランシーバーを手提げカバンに押し込んだ。今やればいいだろと言おうと思ったけれど、彼はすでに家に向かって走り出していた。

 僕はどうすればいい? どっちが正解なんだ? 彼について行けば安心は出来る。けれど、彼の恋人と言い合いになったら面倒だ。訓練場に行けと言われても、誰かが待っているってことか? さっきの電話がそのためのものならば納得がいく。

 うぅー・・・・

 彼女が苦しそうに呻いている。やっぱり傷口が痛むのか、それとも内部が破損しているのかも知れない。僕は彼女の身体に負担がかからないように気をつけながらそっと持ち方を変更した。

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