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僕達が家の外に出るようになったのは、十歳の誕生日を迎えたその日からだった。それまでは外に出ることなんて一度もなかった。家の中で普通に生活を送っていただけだ。特に不自由も不満も感じていなかった。それが普通だと思っていたんだ。
僕達の生活は、朝のベルから始まる。そのベルがどこから鳴り響いているのかは知らない。けれど、建物中に鳴り響いていたことは確かだ。ほんの二秒間のベルで目を覚ますことが出来るのは、当たり前だと思っていた。寝坊なんてしたことはない。
朝起きてすぐに着替えをする。その日の着替えは前の日にベッドの下に用意されている。
脱いだ寝間着はベッドの上に畳んで置く。綺麗に畳めると朝から気分がいい。当然ベッドシーツも掛け布団も畳んでおく。