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 彼を彼女の店に誘った。彼は音楽好きだ。音楽好きはアルコールを好む。音楽とアルコールの相性は抜群だからだ。彼女がそこにいなくても、音楽があればウィスキーが更に美味しく感じられる。勿論彼女がいる方が僕好みではあるけれど。

 自然の騒めきは音楽になる。けれど、人間の騒めきは騒音でしかない。美味しいウィスキーも不味くなる。

 彼がそうだよと、彼女に紹介した。すると彼女は、あらそうなのねと笑顔を見せる。そしてウィスキーを注いで僕と彼の前に並べた。常温の水を添えて。

 それで、お名前は?

 彼女がそう言うと、彼は戸惑うことなく答えた。勿論、認識番号なんかではなく、僕でさえ知らなかった本当の名前をだ。

 俺はミカ、ヨネタカ・ミカだ。ここでは誰も名前を聞いてくれない。嬉しいもんだな、こういうのって。それであんたの名前は?

 彼女の名前もミカなんだよ。男女で同じなんて珍しいよな。

 何故か僕がそう答えてしまう。意識はしていない。無意識に浮かび上がるプライドは滑稽だよな。彼女の前では優位に立ちたい。そんな必要なんて少しもないのに。彼女はすでに僕に惚れているんだから。

 それで苗字は?

 彼は僕に顔を向けてそう聞いた。どうせ知らないんだろと思っているのが顔を見れば分かる。

 だから僕は期待を超える返事をかました。

 クルスだよ。クルス・ミカ。僕の妻になる人だ。

 流石に彼は驚いていた。

 というか彼女も驚いていた。

 大袈裟ではなく、二人の目玉が飛び出しているように感じられた。開いた口が塞がらず、舌が飛び出び出して来るんじゃないかとハラハラもした。まぁ、そう感じただけで現実にそうなっていたわけじゃないんだけれどね。

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