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 恋人とは、月に一度は必ず出かけなければならない場所がある。そこには普段では決して足を踏み入れることが出来ない。初めて行くまでそんな場所があるとも知らなかった。一般には非公開らしいけれど、この街に一般人は少ない。お店の店員くらいだ。というか、店員だってこの街で商売をしている以上一般人とは言えないと僕は考えている。

 一般人ってなんだろうか? 初めてその言葉を聞いたときは不思議に感じた。それは眠りの世界でのことだった。

 彼と彼女が話をしていた。どうせ政治家なんて一般人のことを考えてくれない。学校の先生だって同じだよ。

 なにそれって思ったよ。一般っていう言葉は知っていた。それって普通っていう意味だと思っていた。一般的な考え方、一般的な鉛筆の形は六角形。一般人が普通の人っていう意味なら納得は出来る。けれど眠りの世界では違う使い方をしていた。僕達側の言葉だと思っていたのに、そうではなかったんだ。

 学校の先生って普通じゃないの?

 僕は思わずそう声に出した。

 ん? どういう意味?

 彼に質問返しをされた。

 一般じゃないっていうから・・・・

 僕の方が口籠ってしまった。

 まぁ、先生なんてものを商売でやっているってことは普通じゃないのかも知れない。

 彼がそう言った。

 そういう意味じゃないわよね? 先生だって普通よ。私のおじいちゃんだって高校の先生だったんだから。

 彼女がそう言うと、彼は少し口を尖らせた。

 普通じゃない先生が多いのは事実なんだけどな。

 ただの区別よ。学校では生徒と先生がいるでしょ? それ以外は一般人って呼ぶのよ。けれどね、もう一つ大きな括りにすると、先生とそれ以外で区別をすることもあるの。政治家とそれ以外、スポーツ選手とそれ以外。ただそのときの会話の主役と区別をしているってだけなのよね。意味なんてないわよ。別にバカにしているってわけじゃないんだけど、たまにはそう聞こえるのも事実なのよね。なんでかしら?

 また質問で返されてしまった。眠りの世界では、そんな会話が多い。

 僕達軍人は、決してそんな会話をしない。質問はいっぱいするけれど、質問をされたら即座に答えを用意する。その答えが間違っていても問題はない。質問を質問で返すのは、眠りの世界特有の反応だ。会話があちこちに飛んでいく恋人達もそんなことは決してしない。

 なんでだろうね? 僕は質問返しのつもりでそう言ったけれど、二人は揃って、ね? と言いながら笑った。

 その日から僕は、軍人とその他を分ける表現として使用している。意外と便利なんだ。外で出会う人は恋人を含めてみんなが一般人だ。戦場に行けば軍人とお偉いさん方に分けられる。そうすると僕達は一般軍人になるわけだ。一般って、便利な言葉だよ。

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