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この日もいつも通りに眠りの世界を体験した。
この日が最後になるんじゃないかとの予感はしたけれど、予感というのは大概外れるものだ。戦いの訓練によって生活リズムは変わってしまい、同じ時間に体験することは減ったけれど、毎日というわけでもなくなったけれど、いまだに眠りの世界とは繋がっている。
不思議なことだけれど、普通の睡眠時間に眠りの世界に引き込まれることはない。僕は普通に夢だって見るし、その二つは明確に区別をされているようだ。どんな線引きでそうなっているのかは分かっていないけれど。
この日、二人の友達はそれぞれ形は違うけれど統一感のある制服を着ていた。
今日から新しい学校だねと笑顔を見せていた。
真っ黒なその制服は、少し威圧感があった。五つの金色に輝く綺麗な模様付きのボタンが並ぶ詰衿の上着に太腿の太さで真っ直ぐに伸びるズボンを履く彼は誇らし気にピシッとした気をつけの構えをした。
彼女は大きな襟のついた上着とスカート姿で彼の隣で同じようにピシッと気をつけをする。大きな襟は後ろ側が大きな四角形で、前側は大きな三角形になっている。縁に三本の白いラインがぐるっと一周している。襟の内側には赤いスカーフを巻いている。お腹の辺りでそのスカーフをリボン結びで留めている。
二人は横に顔を向けて目を合わせると、それを合図に右肘を肩の高さまで開き、綺麗に伸ばした指先の人差し指と中指をこめかみ辺りに触れるように持っていき、敬礼をした。
帽子を被れば軍人と同じだなと思った。
そんな姿の軍人はもちろん戦場にはいない。練習場にさえ顔を見せることは少ないけれど、確かに存在しているお偉いさん方はそんな格好をしている。初めて見たのは壇上に上がって挨拶をした男の人がそうだった。女性の戦闘員としての軍人には会ったことがないけれど、お偉いさんの中に混じる彼女のような姿は見たことがあった。大きなリボンをつけておらず、スカートのデザインも違っていたけれど、お偉いさん方特有のお高い雰囲気だけは伝わってきた。短めのタイトなスカートは、可愛さを感じない。格好よさは感じたけれど。
彼女のスカートはヒラヒラで、可愛かった。
俺達もとうとう中学生だな!
彼は僕に向けてそう言ったけれど、僕には意味の分からない言葉だった。
眠りの世界にいるときは、自分の姿を見ることが出来ない。鏡や写真を見れば確認出来るのかも知れないけれど、そういったシチュエーションにはまだ立ち会えていない。
自分がどう動いているのかも分からないことが多い。テレビゲームをしたときも、視界にコントローラと呼ばれる箱を持って操作する手を見ることは出来た。その手を動かすことは出来ても、それ以外の部分がどう動いているのかは、周りの反応や景色で判断をするしかない。座っているのか立っているのか、歩いているのか走っているのかは案外と分かりやすい。
このときの僕は二人の前に立っていて、二人と同様に敬礼していたと思われる。視界の右側の上端に、自分の指らしい影がボンヤリ見えていた。