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部屋に戻ると食事が用意されていた。その日は赤い炊き込みご飯だった。御赤飯と呼ばれている。僕は塩を振って食べる。けれど何故か歴代の恋人はみんなが砂糖を振る。僕も一度口にしたけれど、甘くて驚いた。女の人はそういうものだと思っているけれど、違うかも知れない。
その日は特に勉強をしなかった。そんな気分ではなくなっていた。天井からの声も聞こえてこないし、新しい本も置いてはなかった。
行進していただけなのに、とても高揚感があった。大勢で集まるっていう経験は初めてで、自分以外の誰かと触れ合うのも初めてだった。眠りの世界での友達とは違う、生身の人間と触れ合うのは嬉しいものだ。
眠りの中の友達には、何故か体温を感じることがない。本当に存在しているのか? ただの夢なのか? 答えはまだ、分かっていない。
二人の友達は日々成長をしている。僕がそこに行かない間にも時間は流れていて、それぞれの毎日を送っている。眠りの世界では、この世界とはまるで違うことが多くある。僕の空想力ではとても思いつけないようなものばかりだ。夢は現実と空想からしか産まれてこない。無意識のうちに取り入れていたとも思えないことが眠りの世界では起こっている。記憶を失っている間の記憶を甦らせている可能性はなくもないけれど、夢が現実と平行線で続いていくのは不思議だ。