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壁際で待つこと十秒程だった。なんとなくの予想はしていたけれど、やっぱりビックリした。突然壁が開いた。境目がどこなのかは分からなかった。指示をされたからそこにいただけだ。嵌め込まれたパネルもそこには存在していなかった。
普通の人間は入ることのない空間だ。普通とは違っていて当然なんだよな。なんて考えることが普通じゃない。そこが普通じゃない建物だと僕はそんな理由で理解した。
エレベーターに乗り込むと、なにもしないでドアが閉まって最上階まで連れて行ってくれた。
最上階には、まさに来年から巨大な建物へと移設される子供達が羊水でいっぱいの大きな試験官の中に浮かんでいた。
これを爆発させるのかと思うと気分が沈む。
僕の落ち込みを他所に、彼女は前へと進んでいく。どこにボタンを置けばベストかを探っている。
最終的には建物のど真ん中に置いたけれど、そのときはすでにタイムリミットが迫っていた。後十三秒しかない。僕にはもう、迷う時間すらなかった。彼女がそうなるように仕組んでいたのかも知れないけれど、彼女はそのことについてはなにも言わないので真相は分からない。