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おじさんの本当の目的は男にも分からないという。ただ、あの人は俺達を理解している。それだけは事実だと言っていた。今回の計画にも反対はされなかった。いつも快く手伝ってくれて、余計な詮索はしてこないそうだ。武器や弾薬の調達も、仲間集めもかって出る。現にお前達も集められたってわけだ。そう言って笑っていた。最初のうちはね。すぐに笑いを止めたのは、彼女の視線に気がついたからだ。あれ程の目つきで睨まれたなら、蛇でさえ息を呑み込むだろう。
最初のうちはってどういう意味よ!
彼女が怒っている理由が分からなかった。今では分かるけれど、なにも知らない状態の僕が分かるはずもない。僕はわざとあんな発言をしたわけではない。
途中で気が変わったってことだろ? あのおじさんがどうしてミカを監視さていたのかなんて分からないし興味はないけれど、そこまでしていた相手が瀕死の状態で運ばれて来たんだ。気が変わるのは当然じゃないか?
僕がそう言うと、男は一瞬ニヤッとした。けれど彼女は泣き出した。
私は絶対に認めないからね!
彼女はそう言いながら僕に顔を向けて、僕の胸をドンドンと叩いた。
なんのことを言っているのかは分からないけれど、僕は彼女を抱き締めた。