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男の動揺には理解が出来た。僕には見慣れた光景とも言えるけれど、いい景色ではない。単なる爆発事故だったとしても、交通量も人流れも多いこの場所では悲惨な結果しか待っていない。それに加えて死体が山積みのトラックが巻き込まれてしまった。
吹き飛ぶ多くの死体。その中には生きている街人も混ざっている。おぞましい以上の言葉が出てこない。
僕は彼女の手を繋いだまま走り出す。どこに行けばいいんだ? 男の背中を押してそう叫ぶ。
取り敢えずは真っ直ぐ、その後は俺が先導する。
走り出した男はスピードを増し、すぐにその背中を見せてくれた。
向かった先は、彼女が最初に目指していた高層ビルの合間の路地だった。彼女の勘が当たっていた。
路地には入ったけれど、高層ビルには入らない。って言うことはまた地下に潜るものだと思ったけれど、そうはならなかった。
高層ビルは遠目からだとその奥にも無数に立ち並んでいるとも見えたけれど、そうではなかった。ハリボテではなかったけれど、表から見える数のビルしか建っていなかった。
そしてその先には、きちっと区画整理されている住宅街が広がっていた。その一つ一つの敷地が広い。眠りの世界の中で通っていた学校程はあるように感じられた。