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玄関に鍵はかかっていない。いつだって自由に外に出られる環境ではあったのに、僕達は誰一人としてそうはしなかった。理由は多分、単純だ。その発想が湧かなかっただけ。
お風呂を上がると、リビングのテーブルに食事が用意されている。心で浮かべたリクエストの登場率が半端ない。不思議なんかは少しも感じない。嬉しさで頭は一杯だ。
今日はハンバーグ。アンダーアンドインアンドオン。三種類のチーズがそれぞれに置かれている。
恋人が来てからは、恋人の分も用意される。気分次第では恋人の手料理も食べれるけれど、その確率は低い。僕はこれまでに一度しか食べていない。
晩御飯を食べてからはリッラクスタイムが始まる。何故だかいい香りが部屋中の溢れる。天井から流れる音楽が心地良い。
部屋にはいつも音楽が流れている。いつからなのかは分からないけれど、音楽は生活に密着している。覚えてはいないけれど、身体が感じる母親のリズム。タイミングがバッチリなのは何故?