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第18話 「再会」

 王様に無事に契約書を渡し終えた。

 王様から掛けられた言葉は「承知した」という一言だけだ。

 特にねぎらいが欲しかった訳では無いが、紙切れ一枚渡す為に、これだけの期間を掛ける意味があったのか不安になっていた。

 本当は三日程度で終る任務だったのではないかと思ったのだ……。




 ベイアー伯爵(はくしゃく)からは強く引き留められたが、自分が望んでも恐らく留まれないという事情を伝え城を去った。

 街を出て四人でリィディアの示す帰還ポイントへと足を向ける。


 しばらく歩くと、少し小高い丘の上にある草原へと到着した。

 リディアがカーラからの声が未だ聞こえないと言うので、しばらく座って話す事にした。

 クリスには、それとなく自分達の正体を伝えてはいたが、恐らく今日でお別れになるので、自分達の事を詳しく話す事にした。


 クリスは自分が話す事を眼を輝かせながら聞いてくれた。

 いつか自分も異世界へ転生して旅をしたいと言っているが、出来る事ならカーラに相談して彼を一緒に連れて帰りたかった。


「生まれたにゃーにゃーよー!」


 クリスとの別れが寂しく、しんみりとしていた所に、にゃーにゃーよの明るい声が飛びこんで来た。

 にゃーにゃーよが変な生物を抱えている。

 ドラゴンに見えなくも無いが、短足でずんぐりむっくりとしたフォルムをしている。

 どちらかというと、にゃーにゃーよの子どもと言った方がしっくりくる感じだ。


「ねえ、クリス。あれは本当にドラゴンの幼生かなぁ?」


「うーん。ちょっと待ってね」


 クリスが対象の正体を調べる魔法を掛けている。


「うわあぁぁぁ」


 何かに驚いたのか、クリスが転がる様に後ろに下がった。


「君たちはやっぱりおかしいよ。本物も何も……」


 クリスはそこまで言うと、急に押し黙ってしまった。

 ドラゴンの幼生らしき生物がクリスを見つめている。

 クリスは静かに(うなづ)くと、何事も無かったかの様に笑顔で自分の方を向いた。


「多分本物だと思うよ。とにかく君たちが大切に育てる事だね」


「でも、連れていけるかなぁ」


「絶対大丈夫だと思うよ」


 クリスの絶対の根拠が分からないが、彼はドラゴンの幼生の何かを知ったのだろう。

 その何かを知りたかったが、恐らく教えて貰えない。

 というより、クリスは教える事をドラゴンの幼生に禁じられた気がするのだ。


「お友だっち! お友だっち! にゃーにゃーよー♪」


 にゃーにゃーよが変な歌を歌いながら嬉しそうに駆け回っている。

 いつの間にか、生まれたばかりとは思えない大きさになっているドラゴンの幼生も楽しそうだ。


 暖かな陽射しの中、野原を柔らかな風が吹き抜け、にゃーにゃーよ達を追い越して行く。

 横には二匹を眼で追っている笑顔のクリスが居て、リディアが近くを舞っている。

 穏やかで幸せなひと時だ。

 すると、リィディアが肩に乗って来て俺の頬を触った。


「また泣いているの?」


「え?」


 リディアが小さな手で涙をすくっていた。

 また気が付かないうちに涙が出ていた様だ。


「大丈夫。何でも無いよ」


「そう。じゃあ良いけど。うふふ」


 リディアが何かに気が付いた様に飛んで行った。

 少し離れた場所で手招きをしている。


「カーラの声が聞こえたわよ。この近くに集まって!」


 俺はにゃーにゃーよを呼び戻して、クリスと共にリディアの傍に行った。

 リディアが慌てている。


「直ぐに転移が始まるみたい!」


「クリスの事を聞けないかい?」


「分からないけれど、カーラが伝えてきた転移メンバーには入っていないわよ」


 どうやらクリスとはここでお別れの様だ。

 クリスもリディアの言葉を聞いて、一緒に転移されない事が分かり、残念そうに苦笑いしている。


「クリストファー。君とは、またどこかできっと会えると信じているよ」


「うん。必ず会えるよ」


「元気で」


「皆さんも」


 クリスと堅く握手を交わした。

 半年以上共に過ごした思い出が頭を駆け巡る。

 別れが悲しくて胸が締め付けられた。クリスの目にも涙が浮かんでいる。


「クリス! 必ず……」


 そう叫んだ瞬間に転移が始まった。


 ----


「はーい! お帰りー。お疲れ様でした~」


 目の前に赤毛の綺麗な女性が居る。

 一年以上会っていないが、間違いなくカーラだ。

 任務に行く前に会った時と同じ格好をしている。


「カーラさん、お久しぶりです」


「うんうん。三十分振り位かしらね」


 カーラが意味の分からない事を言っている。


「いや、一年以上お会いしていませんよ」


 俺の言葉を聞いて、カーラが可笑しそうに笑っていた。

 すると横から誰かが現れた。


「お帰りなさい」


 声の主を見ると、金髪の青年が立っていた。

 顔に誰かの面影がある。

 青年が手を差し伸べて来たので握手をした。

 その瞬間、相手が誰だか分かった……。


「く、クリス!?」


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