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第5話 最強の敵現る! 軍魔司令パパチチイヤン!

「な、なんだと…。それはまことか」


 軍魔司令パパチチイヤンは拳を震わせる。


犬人王コボルトキング豚人王オークキング、そして牛人王タウロスキングまでもが敗れたとは…」


「それだけではございません。鳥人王ガルーダキング魚人王マーマンキングまでもが…」


「エッ!? ソレってほぼ壊滅じゃん! 魔人王サタナキングの俺やられたら六魔王軍おしまいじゃん!」


 パパチチイヤンはアバババと震える。


「レイカス・リヒャルト・インペリオンめ! 魔王ブロゼブブ様を復活させようとしている我が企みにこうも早く気づくとは!」


「いえ、それが…邪魔をしたのは勇者レイカスではありません」


「エッ? じゃあ誰?」


「……や、八百屋のオヤジ、だと。自称ですが」


「……は? 八百屋のオヤジ?」


 パパチチイヤンは笑って手を左右に振る。


「ない。ないから。八百屋のオヤジって…」


「…本当でございます」


「なんでよ!? なんで八百屋のオヤジが魔物をブッ殺してくれてんのよ!? ありえないだろ! それ!」


「……そ、それにあの勇者レイカスを使役している様で」


「し、使役…勇者を?」


 部下が震える手で写真を手渡す。

 そこには頭頂部がストレスで完全にハゲあがり、やつれた顔で黙々と農作業を行う変わり果てたレイカスが写っていた。


「や、やばたにえん」


「…まさに仰る通りでございます」


「言ってる場合か! こ、こうなれば一刻も早くブロゼブブ様にご復活いただくほか…ぬぁい!」




★★★




 カボチャ村では、豚汁王、牛煮王、焼鳥王、魚鍋王が膝を付いてかしずいていた。

 村長宅の焼け跡にドッカリと座るのは、犬人王の頭骨を頭に乗せたヤオキチだ。


「収穫の時は来た! 野菜がこんなに早く育つとはよ!」

 

 ヤオキチはご機嫌で村長の頭をバチンバチン叩く。


「…へ、へい。野菜の成長を促進させる魔法を使いましたもんで」


「そうかそうか! “マホー”だなんて肥料は知らねぇがでかしたぞ! L字フックども! 褒美をやる!」


 ヤオキチは食いちぎったキュウリのヘタを吐き飛ばす。

 村長はひざまずいて感謝してそれをおしいだいた。


「へへへ。ありがとうごぜーますだぁ!」


 キュウリのヘタを舐め回す村長。彼の眼は何処かにイってしまっていた。


「よし! まずは売りに行くぞ! 街に繰り出すぞ!!」


「「「おー」」」


「声が小さいぞ! バカヤロー!!」


「「「おー!!!」」」




★★★




 王都カネカエセーの城門前に露店が勝手に開かれる!


 もちろん言うまでもない! カボチャ村からやってきたエルフどもだ!


「お。いい野菜だねぇ〜」


 王都に用事があって立ち寄った商人がみずみずしいトマトを手に取って感心したように頷く。


「はて、これはいくらだね? 値札が無いようだが…」


「財布1個だ…」


「は?」


 聞き違いかと思い、商人はもう一度聞きなおす。


「いーから財布ごと有り金を全部寄越しやがれ!!」


「な、なんだとぉ!?」


 露店を開いていたエルフたちがいきなり殴りかかり財布をひったくる。


「と、盗賊と同じじゃないか!」


「知ったことか!」


 エルフはツバを吐き捨てる。


「やるか、やられるか! ならやるしかねぇだろうが!」


「いつ殺るの!?」


「今でしょ!!」


 平和主義なんてクソ喰らえ。自分さえ生き残れば後はどうでもいい。そんな餓狼の如き精神を育んだのはまさにサイボーグ・ヤオキチの教えからだった。




★★★




「ひい、ふう、みい、よー」


 ヤオキチは親指を唾液で湿らせて札を数える。


「ガッハッハッハ! 笑いが止まんねぇな! この国は儲かるじゃねぇか!」


 札束で村長のハゲ頭をパンパンと遠慮なしに叩く。


「こんなアメリケンのド田舎に飛ばされた時にゃどうなるかと思ったが…」


 ここで説明しておかねばなるまい。ヤオキチは異世界に飛ばされたとは思っていない。ここがアメリケン合衆国の田舎町のどこかと思い込んでいたのであった!


「持つべきは友だよなぁ!」


 焼鳥王と魚鍋王を両肩に組んでヤオキチはご満悦だ。


「ん? テメェ! 羽がウゼェ! こっちはなんか生臭えんだよ!」


 ヤオキチは恐怖に引きつった顔の焼鳥王と魚鍋王をタコ殴りにする。

 一方的な暴力を見せつけられ、豚汁王と牛煮王は自分たちに同じ悲劇が襲いかかるのではないかと震える。


「クソが! あー、暴れたら腹減ったぞ! 飯だ! 飯を持てい!!」


 ヤオキチの腹が空腹を訴えて鳴り響く。それは聞く者たちには地獄からの呼び声のように思われた。


「今日はなんだ!」


「茶漬けにございます」


 卑屈な笑みを浮かべ、村長が土鍋を持ってくる。


「ほう! 最近、脂っこいのばかりで飽きてきたんだ。そりゃ楽しみだな!」




○献立メモ『軍魔司令のヤバタニエン茶漬け』

・材料…パパチチイヤン(1体)

    米(適量) 

    茶(適量)




 土鍋の蓋を開けると、煮えたぎった中にパパチチイヤンの驚愕の顔が浮かんでいた。


 悲劇! まさに悲劇!! まさしく悲劇!!!


 ヤオキチが同族を喰らい尽くしてしまったので、六魔王軍は軍魔司令を売ってしまったのであーーーーった!


「…お味は?」


「マズイ! すこぶるマズイ!」


 ヤオキチは村長の顔面めがけてベッと吐き出した。


 悲劇! まさに悲劇!! まさしく悲劇!!!


 サタナキング・パパチチイヤンはすこぶる不味かったのであーーーーった!




★★★




「ゆ、許せぬ!」


 例の如く、どっかの険しい山脈の魔界っぽいどこかで怪しげな黒いシルエットが立ち上がる。


「妾の可愛い部下を! 妾を復活させるために尽力したあのパパチチイヤンを惨殺した挙げ句に喰らうとは許せぬ!!」


 例の如き眼だけが赤くピカーンと光る。ホント、なんで光るやねんとツッコミたくなる。お前は小学校の工作の豆電球なのか、と。直列なのか?、それとも並列なのか?、と。


「ヤオキチとやら! 貴様は世にも恐ろしいものをみることになるぞえ! この真魔王ブロゼブブ様が復活したからにはなぁ!!」


 なんで誰もいないのにわざわざ名乗るのか。本当に不思議ですわー。


 そんなご都合主義には負けず、次回につづーくぅ!!! 

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