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第12話 ゴッデムパワー

 唐突に現れた武神ゴッデムは、赤パン一丁の引き締まった尻をブロゼブブとパムに見せつける。


「な、なんじゃオマエは!?」


「名乗る必要はない! もう名乗ったからだ! 俺の名は武神ゴッデムッ!!」

 

 右手で左手首を押さえ、伸びをする…よく日焼けした大胸筋が引き伸ばされ、乳首が浮き立ち、魅惑的な脇が顕になる。剃り残しはない。つまりパーフェクトだ!


「さあ、民衆よ! 俺の名を呼べ! ゴッデムッ!!」


 皆がポカーンとしているのに、ゴッデムの額に青筋が立つ。


「やらないと神界に帰るぞ!」


 サングラス越しの血走った眼で睨めつける。


「わ、解ったのじゃ。皆、コヤツの言う通りに…」


「「「ゴッデムッ!!!」」」


 老若男女、真魔王まで加え、同じポージングして叫ぶのにゴッデムは満足そうに歯を光らせた。


「神様…。神様なら、あの大悪魔のようなヤオキチを倒せるんでしょう!?」


「無理だ! この武神ゴッデムといえど、“世界の理を外れた者”はどうにもできん!」


 いちいち、ピクピクする乳首や上腕の筋肉を見せつけてゴッデムは言う。


「昔聞いたことがあるのじゃ。“理外者”というヤツかえ?」


「その通り! だからこそ、あの創生神ニューワルトといえ手も足も出ずに汚物まみれにされた!」


「な、なんじゃと! あのニューワルトが…」


 ブロゼブブは魔竜ルンボロボンボの残骸を見て、もはやそれを納得する他なかった。


「ニューワルトだけではなーい! 勇者レイカス、勇者レディー、果ては剣魔帝デモスソードまでもが滅ぼされたのだぁ!」


 ブリッジをしてゴッデムは股間を見せつける。


「…世界に名だたる猛者たちを。信じられん。妾が眠りについておる間にそのようなことが」


 赤パンに金の文字で書かれた“神”とあったが、ブロゼブブは眼をそらして見なかったことにする。


「も、もう世界はお終いなの…?」


 変なオヤジと、変なジジイによって危機に陥る世界。

 パムは悔しくて涙する。自分たちだって懸命に毎日を生きているのだ。それを急に現れた異世界の人間が“飽きたから”なんて理由で滅ぼしていいはずがない、と。


「…勝てぬかも知れん。しかし、この世界を支配するのは妾じゃ。ならば刺し違えてでもッ!」


「…そんな必要はない。ヤツらの天敵を用意すればいいのだ」


 ゴッデムは未だ股間を強調しつつ言う。さすがのブロゼブブも思わず振り返って見てしまった。


 股間を見せつけるオッサン、それをガン見する幼女…なんかヤヴァイ違反の気もするが、双方は武神と魔王ゆえに数百歳同士である! 絵面的に問題があっても、事実上なんの問題もない!


「…天敵?」


「そうだ。異世界の敵は、異世界にいる…そうは思わぬかね? ブロゼブブよ」


「…なるほどじゃ。確かに」


「ゆえに! 世界異動させる! 神ゆえに〜、ゴッデムッ!」


 身を起こしてポージングをする。しかし、ブロゼブブを初め皆がボーッとしていた。

 

「マジ神界に帰るぞ!」


「待て待て待て! 解った!」


「「「ゴッデムッ!!!」」」


 ゴッデムはニッコリ笑う。


「…ハァ。それで、彼奴らがどの世界から来たのかは解るのかえ?」


「知るわけないだろう! 俺はこの世界の神様、武神ゴッデムッ!!」


「「「ゴッデムッ!!!」」」


「そ、それじゃ話にならんじゃ…」


「しかし、創生神はこの世界に多数の転生者を受け容れていた! ならばその世界との繋がりもまだある! ゴッデムッ!!」


「「「ゴッデムッ!!!」」」


「しかし、そのような曖昧な情報で…」


「やる前から諦めるのか?」


「やります! やりましょう! ゴッデムッ!!」


 幼い身体で懸命にゴッデムポーズを決めるパム。


「…お兄ちゃ…いや、パム」


「えっと、魔王さん! 世界を救えるなら、可能性が低くてもやるべきです!」


「…ブロゼブブじゃ。そうじゃな。やってみるかの」


「あのー、私たちもさっきからいるんですが」


 天使が困ったような顔で言う。


 そうだ。赤子を抱っこした天使と真っ赤な鎧の中年男性が、所在なげにさっきから立っていたのだ。


「そういえば貴様ら! あのシラキというジジイの仲間だったんじゃないのか?」


「あ、はい。でも、世界が滅びるのはそんな望んでないかぁって…」


「なんか手伝ってた風じゃなかったかえ?」


「ええ。手伝わないと、私たちも殺さてしまいますから…この子もいますので」


 天使は赤ん坊をあやしながら言う。


「その子供は…」


「私とこのゲリアン様の子です」


「天使と人間の子じゃと!?」


「素晴らしいぞ! 古来より、天使と人間の愛の子は“勇者”となると言う! ならば、その“勇気”に呼応して、異世界からも勇者を導き手繰り寄せられるだろう! ゴッデムッ!!」


「「「ゴッデムッ!!!」」」


「い、いや話が飛躍し過ぎじゃ…」


 しかし、昭和のアニメなんてみんなこんなもんだ! 理由なんてない! なんとなくそうだからそうなんだ!


「意味? 意味なんて考えて転生…いや、世界異動なんてできんだろう?」


「しかし、少し待て。世界異動させる方法は解っておるのか?」


「知っている! マニュアルを読んだ!」


「マニュアル?」


 ゴッデムが差し出す薄い冊子を見て、ブロゼブブは訝しそうにする。


「『SシラキAオールWワールドTトランスファーSサービス』? …いや、待て! 『シラキ』って!? それマズイんじゃ…」


「さあ! 行くぞ!!」


 ゴッデムは赤子を掲げ、雄叫びを上げる! 

片足を岩に乗せて! 某劇団のように! 


「世界異動の儀式だ! この世界に勇者を呼び寄せる!! パワーをこのゴッデムに集めろ!!」


 全員が祈り始める。ご都合主義よろしく、よく解らん光のエネルギーが集まりだす!


 それはまさに音響の付いたクジラに乗って歌ってる気分だ!


「はー、アンベレベレベレアンベレベ! ハッ!」


 両手を擦りあげて、ゴッデムはゴッドパワー…いや、ゴッデムパワーを高める!


「アンベレベレベレアンベレベ! ハッ!」


 擦る手に合わせて顔も左右に揺らし、右へ左へと全身を上下運動させる!


 え? 赤ん坊はどうしたって? 決まってる! 擦り上げる度に中空に放り投げているのだ!


「わ、私の赤ちゃん!」


「儀式の邪魔をするな! ゴッデムッ!!」


「「「ゴッデムッ!!!」」」


 見えないエネルギーに弾き飛ばされ、天使が吹っ飛んだのをゲリアンが支える。


「あなた…」


「任せよう」


 この時、ゲリアンは“子供なんてまた作ればいいさ”なんてクソみたいなことを思っていたわけだが、生来の寡黙さが災いして天使には伝わらなかったのであーった!!


「キターッ!! キターコレーッ!!」


 ガクガクとゴッデムが前後に激しく揺れる。

 それは二槽式洗濯機の脱水槽に、濡れた洗濯物を入れすぎてしまった時のようなガタガタっぷりだ(若い子は解らんだろうが)!


 ゴッデムパワーは次元の扉を開く!


 ゴッデムと赤ん坊のドッキングがまさに偶然アルファネムス効果を生み、ハードリングチャンバレー現象が引き起こされ、観点相互作用反応が生じ、内閣総理大臣賞的な連鎖的に多角化式婉曲類型と思わしき多段次元のマシュマロ渦がまさにテラ時空と地球時空との空間の橋渡しをする!!

 

 え? どういう意味だって? 意味なんてない! なぜならば意味があったら世界異動なんてできない故に!!


「「「ゴッデム!!!」」」


 皆の叫びと共にゴッデムが白目を剝いて消え去る!!


 落ちてきた赤ん坊をブロゼブブがスライディング(裸体にローブなので下半身にはモザイクがかかる)でナイスキャッチした!


「か、神様…ゴッデム様が…」


 まるで、殺し屋サイボーグがテレポートしたかのようなバチバチと共に大穴が生じていた。ゴッデムの姿は影も形もない。


「次元の渦に呑まれたんじゃ。恐らく別の世界に…」


 ブロゼブブとパムだけは悲痛の表情を浮かべたが、周囲の人々の反応は薄かった。なぜならばこんな訳の解らんことをやらせて置いて、勝手に消えた神などどーでも良かったのである!


「…しかし、これでは何の意味も…」


 そう言おうとして、ブロゼブブは穴の奥に何者かの気配を感じた。


「イタタ! もう何よ!」


「…ここはどこなんだ?」


「なんだか、変な場所に飛ばされてしまったみたいですね」


 ゴッデムが消えた場所から突如として現れた美少女3人! 彼女たちの正体は何なのか!


 そして、唐突に現れて唐突に消えたゴッデムの運命は!?


 次回につづくぅーーーーッ!!!

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