愛の涙におぼれそう
「アリス、僕は無事だ。ほら、そこに浮かんでる扇子でもって落ち着いてっ」
「イコールっ、どこにいたのっ?」
「え・・・」
「え?」
「スカートの中」
「誰の?」
「ここにはスカートはいてるの君以外いやしないよ」
「とにかく無事でよかったわ」
アリスは小さな扇子で自分を煽いでみました。
すると煽ぐたびに、身体が服ごと小さくなっていきます。
イコールに合わせてちょうどいいぐらいになるまで煽ぎ終わると、アリスは溜息。
「こうも身長が変わる日ってあるのかしら?」
「なくもない」
「そうかしら?」
「そうかもしれない」
「どうなのかしら?」
「どうでもいいかもしれない」
「そうではないと思うけれど」
「そうかもしれないんだ」
「イコールって、基本的に意味が分からないのよ」
「そんなことより、この涙の海、どうしたらいいんだい?」
今は大きく感じる扇子につかまりながら、アリスとイコールはなんとか泳いでいる。
「ううん・・・」
「僕は悪くない」
「なんで?」
「いや、いいんだ」
「そうなの?」
「どうなの?」
「なにがなの?」
「なにが?」
「なにがだっけ?」
「なんだっけ?」
「なんだったか忘れてしまったわ・・・」
開いているドアに向かって波が動いてくれたおかげで、ふたりはドアを通りぬけた。