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「eat me (私をお食べ)」


 ふたりで中に入ると、壁は壁に戻った。

 分厚い赤いカーテンをめくると、多少明るめの空間を見つける。


「チョッキを着たウサギさんは、いったいどのドアを通ったのかしら?」

「全部同じ部屋につながってたりして」

「まぁっ、だったら妙ちきりんな気がして面白いわね」


 その空間には、いくつも種類の違うドアがあった。

 大小さまざまなそのドアたちを調べると、全部に鍵がかかっていた。


 溜息。

「どうしたらいいのかしら?」

「壁、開かない・・・閉じ込められたっぽいよん」


「んん~・・・あら?」


 今まで気にならなかったが、部屋の真ん中にあるガラスでできたテーブル。

 その上に、ぜんまいのような鍵があった。

 それを持ち上げると、光の加減できらりと光った。

 いろんなドアにためしてみて、そして一番小さめなドアが開いた。

 顔をねじこむように、ドアの向こう側を見る。


「イコール、イコール。すごいわ。まっすぐな道を『チョッキウサギ』さんが走ってるっ」

「ほぉう・・・で、どうやってここを通り抜けるの?」

「うーん・・・」


 アリスはおしりがてっぺんになるほどのよつんばいから立ち上がった。

 テーブルの上にいつの間にか、透明な小瓶を見つけた。

 アリスは活字中毒だ。

 その透明な小瓶についている札に文字が書いてるのに気づいて、それを読んだ。


「『わたしをお飲み』・・・?」


「はぁ・・・飲み干しておしまい、アリス」

 テーブルにあったパイを持ち上げて、妙に色っぽい声でイコールがそう言った。


「なんなのかしら?」

 瓶の封をといて、匂いをかいでみる。

 そしてアリスは、それを少し飲んでみた。

「・・・え」


 急に視界が下がり始めるので驚いていたら、いつの間にかアリスの身体は十六センチ。


「最高だ」

 イコールは小さくなったアリスを見てそう呟いた。


「なんで小さくなったのかしら?」

「服ごと小さくなるなんて、反則だよ」

「なににのっとってよ?」

「僕の手の上に乗るかい?」

「それはしてみたいわ」

 アリスはイコールの手の上に乗ってみた。

 イコールの赤い両眼がこちらを楽しそうに見ている。


「胸ポケットにはいってみたり?」

「まぁ。なにかの童話で読んだわ。肩に乗ったりするのよね。こうゆう時って」

「ほうほう。それでこれは、アリスの飲みのこし・・・」


 イコールはアリスの口をつけた小瓶にわざと口をつけた。

 偶然同じくらいの量を飲んだのか、イコールもアリスと同じくらいの背丈になった。


「小さくなっている間にアリスが床に飛び降りたので、イコールの手は無事だった。

「なんて楽しいのかしら。ねぇねぇ、イコール。あの大きなパイを食べてみましょうよ」


 アリスは小走りにイコールが床に置いてあったパイに向かう。

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