時間みたいにウサギが追われて
「イコール?何をしているの?」
「ああ、やっと来たか」
書斎机をポンポンとイコールが小突いた。
アリスは人波をかきわけ、書斎机にひょいと飛び乗るとあぐらをかいたように座った。
「何をしているの?」
イコールの赤い両目がアリスを見上げる。
「君を待っていたに決まっているじゃないか。その間に愛人候補を考えていたのだ」
「だから書斎机が用意されたの?」
「納得いかないな」
「なにが?」
「ウサギだ」
「ああっ。ウサギっ。どこへ行くのかしら?」
「とりあえず、君を待っていたんだ」
「追いかけるの?」
「君がそうしたいなら」
「どこへ行くのか知りたいような気がするわ」
「好奇心が何を呼ぶのか・・・昔っからの謎問題」
「ん?」
「僕はそういうめんどうくさいのが嫌いじゃない自分に疑問としっくりを感じるのだよ」
「ふぅん・・・ねえっ、早く行きましょうよっ」
「チョッキを着たウサギのところ?」
「そう」
「うん、まぁ、行くあてもないしね」
「ここ、空港よ?」と人波の中の少女のひとり。
「ウサギ、あっち」
「あっちへ行きましょうっ」
アリスはイコールが指さした方を見て、ぴょんと書斎机から飛び降りた。
「ああ、レディたち、ごめんよ。もう行かなくては」
そう言ってイコールはアリスと手をつないだ。
つないでいない方の手の指を振り、女子たちに別れを告げた。
空港の真っ白な壁の所へつくと、イコールはそこに手をかざした。
ふわっと扉ほどの空間が開く。
アリスは不思議に思って、こう言った。
「不思議だわ」