ハンプティダンプティは塀の上
「やぁ」
イコールはしばらくその様子をみて、めんどうくさそうに何度かうなずいた。
「やぁ、君はおおかた、ハンプティ・ダンプティ」
「なんで塀の上にいるのかしら?」
「降りられなくなってね」
「お手伝いしましょうか?」
「おや・・・じゃあ、頼んでみようかな」
「ねぇ、イコール、あなたも協力して?」
「オーケー。分かったよ、アリス」
「ふたりにお願いがあるんだ」
「塀から降りたいのね?」
「そう。僕を、殺して欲しいんだ」
アリスは驚きに軽く目を見開いた。
―――――
森の中の塔に、ひとりの美しい姫が幽閉されていた。
通りがかりの男がその娘を見つけ、愛を交わして子をなした。
姫を幽閉しているのはおそろしい魔女だった。
魔女は生まれた子供の無事を保障するかわりに、姫に手をだした代価を求めた。
歳をとらぬ魔法のくさりにつながれたまま、塀の上に座っていること。
子子孫孫、末代が終わるまで。
しかし、子孫に渡す鍵穴の銃で鎖を束ねている鍵を打ち抜けば、男は死ねる。
その男の名は、ハンプティ・ダンプティ。
いつしか自分の殻にこもった、「卵」のような男だと呼ばれている。
―――――
「それが、あなただと言うの?」
男の話を聞いたアリスが、素直に質問する。
「そうなのさ」
「いつからそうしているの?」
「さぁ?ここには時計もカレンダーもないから」
数秒の間、
あれ、笑いをとったつもりなのにと男がいうと、イコールが薄ら笑った。
「他に、魔法を解くすべはないのかしら?」
「意外だ。さすがアリス」
「どうして名前を知っているの?」
「頭の上に煙で書いてあるじゃないか」
「ディーとダムも似たようなことを言っていたわ」
「誰だい?」
アリスとイコールは顔を見合わせて、男を見た。




