羊の獣人と言葉遊び
少し先に行くと、そこは川だった。
砂利にカヌーがいっそうあって、そこに凭れて、羊の獣人が編み物をしていた。
「君、君・・・」
うろん、とも似ているような目で、呆然とイコールを見る羊の獣人。
「ウサギの家で、毛糸を張って助けてくれたよね?」
「まぁね」
「礼を言う」
「なら、お礼に、カヌーをこいで欲しい。向こう岸まで」
「ちょうどいい。乗せてくれ」
カヌーを出す。
アリスはぼやいた。
「このオールに、羽根がついていたらいいのに」
「父上に頼もうか?」
「このセーターに襞は必要かな?」
アリスは羊に聞く。
「何を編んでいるの?」
「セーターだよ。角をかくすために、ギャザーでめくらましでもしようかと」
「あら、フード付きロングスカートセーターにすればいいのよ」
「なんだってっ。そりゃあいい」
「坊やは何歳なんだい?」
「歳は毎年変わる」
「ははは」
「もうすぐ向こう岸ね」
向こう岸について、羊の獣人は言った。
「きっと、ディーとダムの兄弟に出会うよ」
「ディーと、ダムね」
「オールスターの話、知ってる?」
「どんな話?」
「牡蠣が食べられる話さ」
「知らないな」
「どこかで聞いたことあるような気がするわ。なんだか、小さい頃・・・」
「どうしてオールスター?」
「みぃんな、『お星さま』になっちゃったのさ」
「なるほどね」
「きらきらひかる こうもりさん・・・」
「アリス、どうしたの?」
「なんだかったかしら?昔、どこかで聞いたような・・・
考え込むアリスの肩に手を添えて、道をはずれないように進むイコール。
「アリス、今は考えなくていいと思うよ」
「だって・・・なんだか、『重要』なのよ」
突然立ち止まり、自分の腕をひぱって止めたイコールに驚くアリス。
道は分岐点近く。
「どうしたの?」
「ディーとダムかい?」とイコールが言う。
木陰から現れたのは、ひとめで双子だと分かる二人組。
長い髪をまとめ、同じデザインの服を着ている。
彼らは道にたちはだかった。




