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歌う花とイコールの空腹


「どー・どーっ」


 爽快に風を抜けていたドードー鳥が、足を踏ん張って停まる。

 土をこすってななめに保たれた姿勢を起こし、座る。

 メアリー・アンが言った。


「ここまでだよ。こちらから先は自分たちで行きな」


 ドードー鳥から降りたふたりは、メアリー・アンに振り向いた。

「ありがとう。メアリー・アン」

「何かの折にはお礼をするよ」

「いいんだよ。散歩のついで程度だから。じゃあなっ。行くぞ、モーリシャスっ」

 アリスは道を戻って走り出すメアリー・アンとドードー鳥に大きく手を振った。

「ドードー鳥さんも、ありがとーーーっ」


 イコールはなにげなくぼやく。

「あの鳩みたいなの、モーリシャスって名前なんだねぇ」

「ん?」

 イコールに振り向くアリス。

「アリス、あの鳥、『バナナくちばし』って名前らしいよ」


「そうなの?ありがとーーーっ、ばななくちばしーーーっ・・・あ、さんっ」


「きっともう、聞こえてないよ」

「そうね。じゃあ、先を行きましょう」



 ◆◇◆◇



 ふたりは久滝葉クローバーの多生する道を歩く。

 なぜだか知らないが、通れる均された道がある。

 アリスはスカートのすそが触れるくらいの感覚を楽しみながら言った。


「風が吹くと、クローバーの揺れるさまがまるで海原の水面ね」

「ああ・・・よくよくは見ていなかった」


「きゃっ」

 転びそうになるアリスを受けとめるイコール。

「なに、どうしたの?」

「何かが、スカートをひっぱったのよ」

「なんで?」

「なんでかは知らいないわ」


「気になったからよ」

「「ああ、そう」」


「あなたたち、ユニゾンができるのねぇ~っ♪」


 アリスとイコールは顔を見合わせてぱちくりとすると、上を見上げた。

 そこには、いつの間にやら茂っている花々がいた。



「「え」」



「あなたたたちは、なんて言うお花なの?」


 アリスはイコールに焦りながら耳打ちする。

「ねぇ、ねぇ、お花がしゃべってなぁい?」

 イコールは何度かうなずく。

「ここを上手く通り抜けるために、ここからはほどほど口裏を合わせよう」

「あら、バターフライが飛んでくるわ」

 花々を愛でるように飛んでいるのは、バターを塗ったパンだ。

「ば、バター・・・フライっ・・・?」

 多少臆するも、その不思議さに心惹かれるアリスは近づこうとする。

「美味しそうですね」  


「「はぁっ?」」

 アリスを含め、花々がイコールの発言に注目する。


「え・・・?」

 きょとんとしているイコールはほほをかくと、アリスを見た。

「美味しそうくない?」

「美味しそうくない」

 強めの否定をするアイス。


「じゃあ、お腹すいてない?」

「空いてるけど、なに?」


「イヤなら、少し先を歩いていてくれ」

「なんのこと?」


「バターフライを、僕は、食べようかと思う」

「オッケー」 


 アリスは花々の悲鳴が聞こえるなか、道の先を進み始めた。

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