ブーブーと故障
「どんな法則でそちらへ進んでいるの?」
「え、テキトー」
「ああ・・・何か『つて』があるんだと思ってた」
「ないない」
「ああ、そうなの・・・」
「俺の勘はけっこう当たるから」
「これまでの人生経験上、妙な『納得感』があるわ」
「そう言ってくれるのは、きっと君だけだ・・・」
「あっ、見て、あそこっ、誰かのお家があるわっ」
「ウサギのお家だといいね」
「そうねっ」
バイクがブーブーと鳴き出す。
イコールはバイクの速度を緩める。
続く警告音。
「なに?」
突然鳴り出した音と共に、進行を停止するバイク。
「故障だ」
アリスとイコールはバイクを降りて、森の中の拓けた場所の最寄の家に向かった。
◇◆◇◆
「メアリー・アンっ、メアリー・アンっ」
最寄りの家の中で、誰かが叫んでいて、アリスとイコールは顔を見合わせた。
小さくドアをノックして、静かに開けて、覗き込んでみる。
「「あ~の~・・・」」
ドタバタと音がするだけで、出迎えはこない。
「入ってみる?」
「そうね・・。いいのかしら?」
「ずっと隠していましたが、アリスさん、トイレしたいので、ここで借りましょう」
「そうだったの。気づけなくてごめんなさい」
「いいんだっ、気づかれなくてよかったよ~」
アリスが家の中に向かって大声で言う。
「あの~、どなたか~、いらっしゃいませんかぁ~?」
もっと大きな声で返ってくる。
「忙しいんだっ。トイレを借りたいなら別だが、そうじゃないなら声をかけるなっ」
「すいませーん、トイレ、借りても、いいですか~?」
「メアリー・アンを知らんかね~?うちの召使いなんだがっ、手袋が見つからぬっ」
「手袋とメアリー・アンを探すの手伝うので、トイレ借りていいですか~?」
「かまわぬ~」
アリスはイコールを見た。
「かまわない、って」
「うんうん。多分あっちにトイレあるから、君は適当に」
「分かったわ」
イコールが一階の奥へ、そしてアリスはなんとなくそれを見たあと、屋内へ踏み入る。
床板が抜けていて、片足がはまって転ぶ。
アリスは「またなのっ?」と言いながら、片足を穴から引き抜いた。
立ち上がりスカートを払って、足の具合を確かめる。
「なんだかなつかしいような気もするわ・・・」
そして二階への階段を、アリスはのぼっていく。
「こうなっちゃしかたない、女王様のゲームに遅れちまうっ」
そう言って玄関を乱暴に閉めて走り出て行ったのは、チョッキを着たウサギだった。
「まぁっ」
アリスはぱちくりとした。
「ここって、チョッキウサギさんの家なのね?ぜひチェックしなくてはならないわっ」
アリスは二階へと上がりながらつぶやいた。
「だって、メアリー・アンを探さないとトイレを借りたお礼ができないじゃない」