魔法がとけて
「あれ、私は……」
「オレ達いったい、何を……」
「誰か、この植物をなんとかしてくれー」
グリードの言葉のあと、次々に目に光が戻っていく操られていた人達。
「アルテ、これって」
「あぁ、魅了がとけたみたいだな? どういうことだ」
「魅了の上書きだ」
グリードが説明してくれた。
「あぁ、魅了で操られているなら魅了で元に戻すよう願えばいいわけか」
「そんな――、私の――」
「これで、佐藤さんの魔法も意味がなくなったよ。さぁ、戻ろうよ」
アナスタシアはふるふると頭を横に振る。
「戻れるわけない。だって、私、エリナちゃんにひどいことした。月城君に、ひどいことした。あっちに戻って、どんな顔をしろって言うの? だから、だから私は……」
怯える彼女の後ろから、クレスヘラが剣を握り近寄っていくのが見えた。
「人々を惑わす魔女め!! 覚悟しろっ」
魅了がとけている彼は、アナスタシアに剣を向ける。
「危ない!」
この世界で色々されて、色々言われた。だけど、彼女は、いつも悲しそうだった。私、知らないといけない。彼女の事。今まで聞いてもらってた分を聞かせてもらうんだ。だって、私がどれだけ変わっても、いつも笑顔で一緒にいてくれた、ただ一人の友達。
アナスタシアを助けるんだ! そう思うと、身体が熱くなる。気がつくと、彼女のいる場所に移動していた。
「ナホっ!!!!」
ぎゅっと彼女を抱き締める。一緒に戻るんだ。どんな事があって、どんな理由があっても、私の大事な友達なんだ!
「エリナちゃん……」
剣が振り下ろされる瞬間、私達を白い光が包み込んだ。
ギィンという音が響いたが、私達に刃が届くことはなかった。
なぜ? 目を開き、確かめると、剣を持って、立ち竦むクレスヘラ。
「神聖力……」
そう言って後退り、頭を下げる彼は、グリードによって、また動かないように命令されていた。
「エリナちゃん……」
「ナホ……、ごめんね。私、知らないうちにナホを傷付けてしまったのよね……」
「ちが…………」
「だから、謝らせてよ。お願い、教えて――」
「…………違うの!! エリナちゃんは、何も悪くない。私が、悪かったの……」
わぁぁぁと泣き出した彼女を、私はもう一度ぎゅっと抱き締めた。
ざわざわと、まわりが騒ぎだすけれど、植物が彼らを捕らえて離さないので、彼女が泣き止むまで、私達に何かする人は誰もいなかった。
◇
「ごめんなさい」
アナスタシアが、謝る。
「ここでは、話しにくいこともあるだろう」
アルテが、そう言うと、アナスタシアはこくりと頷く。
「……移動しよう。オレが運ぶ」
「いやいや、ここはボクにまかせてよ」
ふわりと姿を現したのは神様。
「えーっと、えりなちゃんとなほちゃん、だいすけとひろきだけでいい?」
「まって、ルミナスとメイラも」
「僕もだ!」
なんか、さらっとまじってきた人がいる。
「おっけー」
ユウが手をまるでパソコンのキーボードにタッチするように構え、大きく片手を振りかざし何かのボタンを押す動作に入る。
腕を振り下ろそうとした時、王が叫んだ。
「待て、メイラはここに残してくれ!! 幸せになれないのをみすみす見過ごすつもりはないっ!!」
「お父様……」
「だってー。どうするー?」
「気にせず、一緒にお願いしますっ」
「なっ」
驚愕して、口をあんぐりした王に、メイラが続けて告げた。
「幸せになれない? 決めつけないでもらえます? 他人から幸せかどうかなんて決めつけられたくありません。私の幸せは、私が決めます!」
「メイラ……」
「私は、ルミナスと、エメラ様と幸せになるので」
メイラがにこりと笑い、ユウが振り上げた手をおろす。
「それじゃあ、行くよー。ボクの家へ」
あ、そこなんだ。そう思った瞬間、ふっと目の前の景色が変わった。




