この世界、楽しい?
どうしよう……。
私は今、アルテの部屋の前に立っている。突撃しても、いいかな。でも、女の子が、夜中に男の人の部屋に行くって……。
あまり良くないことだよね。でも、話したい。そうだ、話すだけ! 他に他意はない!!
コンコン
ドアをノックして、緊張しながら待つ。返事がなかったら、戻ればいいよね。
「誰だ? ――エリナ?」
「夜遅くにごめんね」
開いた寝室のドアから、アルテがのそりと姿を見せる。
「どうした?」
「あの、話したい事があって」
私がそう言うと、アルテは廊下を少し見回してからドアをもう少し開き、中にいれてくれた。
椅子を引っ張りだし、彼が座る。私はベッドに座れと指で指示されたので従った。
「……で、なんだ?」
ルミナスとの話が終わってから、彼の纏う雰囲気が少し変わった気がする。ピリピリというか、眉間にシワがよっていそうな。
いつもの調子で話していいのかわからなくて少し、言い出しにくい。
「アルテはさ、……」
言ってもいいのかな。私は出かかった言葉を途中で止めた。
「俺が何だ?」
「この世界、楽しい?」
出かかった言葉を一度、胸の中に戻して他の言葉を紡ぐ。
「ん? ……どういう意味だ?」
「私はさ、この世界に入りたいって願ったの。引き込まれたのはその時」
「そうなのか」
「アルテは?」
「俺はわからないな。気がついたら三人がこの変わった姿でユウの前にいたんだ」
「そうなんだ。じゃあ願いは?」
「わからないんだ――。たぶん……」
たぶん? アルテは不思議な言い方だ。なんとなく、願っていたことに心当たりがあるのかな。
気がついたら姿が変わっていたのは一緒なんだ。
「エリナはこのゲームに入りたいってだけだったのか?」
「え……?」
聞かれて私は思い起こす。あの時は、喧嘩別れでイライラしてて、ゲームの世界に逃げてた。そう、世界でたった一つしかない位に珍しい宝物が欲しい。宝物は期待を裏切ったりしないから……。そう思っていた。
私はアルテの顔を見る。
「そっか――」
やっと見つけた、宝物。ってことなの? ねえ、ユウ、教えてよ……。
首をふりながら答える。
「ううん、もうひとつお願いしてたみたい。神様は、叶えてくれたかも」
最初はビックリしたけど、彼に出会えて良かった。もう一度、恋がしてみたいって思えた。
「そうか、良かったな。あぁ、さっきの質問だが俺は、好きなゲームだからここは楽しいぞ」
笑って良かったなって言ってくれる、彼の事が好きだ。
楽しいって思ってるなら、一緒にここに残ろうって、言っちゃ駄目かな。でも、そうしたらユイやカオルの事が――。
「ねぇ、カオルさんは、何を願ったか、教えられない?」
「…………」
「そんなに難しい話だったの?」
「…………」
話さなくなってしまった彼に焦り、私は手をふって謝った。
「ごめんね、言いにくいことだったら――」
「俺はな――」
同時に話し始めた彼の目がまっすぐで、私は息を飲む。
「俺と、妹、唯が二人きりの家族って言っただろう? ――両親が事故で死んで、俺達は月城、薫の家にもらわれたんだ」




