ピンチです?
「あれ、えっと……」
「エリーナ」
私はいまとてつもないピンチに陥っているのではないだろうか。
目の前には、どう見ても間違いようがない王子様。息を感じる位の距離にいる。というか、彼の両腕で囲われてる。壁ドンならぬ、崖ドン? 何て言うんだ、これ。
「あの、あの……」
先ほど三人でダンジョンに入り、いきなり大型モンスターがでたから手を離して戦っていたのよね。そしたら、今まで見たことないような光が足元から現れて、気がついたらここにいて、それで。
「会いたかった……」
今に至るんですが、何故あなたがここにいるんですか!!
「アルベルト様、私は」
「知っている。グリードから聞いている」
知っている? 私のこと? 待って、何を聞いてるのかこっちはまったくわかりません!
距離が近くなり、顔が、体が近づいてくる。
「ストップストップ、何するのぉぉ!?」
と、言おうとしたら、口をぎゅっと押さえられた。
むぐむぐ、何も言えません。
アルベルトは、後ろを向きながら何かを探っているようだった。
何分たっただろう。数秒だったかもしれない。
急に、彼は手を離してくれて、私は解放された。
「僕の苦手な相手がうろついててね。少しだけ静かにしてもらえるかな」
私はこくこくと頷いて、ぺたりとその場に座った。
アルベルトも、ふっと笑いながら隣に腰を下ろした。
「本当に中身だけが違うとはなぁ」
ポツリと彼は呟いた。
「本当のエリーナは、僕が嫌で君と入れ替わったのかな?」
私は急いで首をふった。けれど、彼女の願いを知らないから、言葉は紡げない。
「ははは、ありがとう。僕がこんなに愚かだったなんて、知らなかったよ。エリーナに会えないだけで、いなくなって初めて大切さに気がつくとは」
何だろう、自信に満ち溢れる彼とはまるで違う。こんな一面もあるんだ。
ストーリーに興味がなかった私は、彼の表面しか知らないし、あまり深く考えたことなかった。
でも、そうだ。一人の人間なら、いろいろ考えることあるよね……。
「あの、アルベルト様はここでいったい何を……」
「ん、気になるかい?」
「あ、いえ。別に」
それよりは何を誰からどう聞いてるかが気になるな。
彼は私の態度を見て、ぷっと吹き出した後、ははははと大きな声で笑いだした。
「君はエリーナと違ってはっきり言うんだね。僕に興味がないかぁ。女性にそんな風に言われるのは初めてだよ」
「そうでしょうね」
こんなにカッコいいし、王子様だし、悪いところなんて……。たぶん、ないよね?
「君には悪いけれど、はやくエリーナを返して欲しいな」
「帰ってきたところで嫌われてたらどうするんです?」
あ、なんだか、ズバズバ言葉が出てきてしまう。何でだろう。もう少し考えて言ってあげればいいのに。アルテと向き合う時みたいなドキドキがないからかな?
「んー、そうだね。エリーナに嫌われたら僕、立ち直れるかなぁ。でも、やっぱり本人から聞きたいな」
そう言ってから、彼は立ち上がり、手を出してきた。
「それでは、違う世界からきたお姫様。貴女を仲間のところへとエスコートさせていただきます」
「私、お姫様なんかじゃ……」
にこやかに笑う彼の手をとり、立ち上がる。
「では、君の名前は?」
「エリナです」
名前を聞いた後、アルベルトは少し驚いていたけれどまた微笑んだ。ゲームのヒーローらしい、優しい最高の笑顔。
「エリナ、行こう」
エリーナのこと、考え直してくれたのかな。
私は彼の後ろについていく。アルテ、どこにいるかなぁ。




