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私の宝物を探して~返してよ?それは私のものだから!~  作者: 花月夜れん
前編

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私の名前

「エリーナ!」


 え、アルベルト?

 びしりとこちらを指差しながら、アルベルトが近付いてくる。アナスタシアも彼の後ろにいた。


「いいか、()()は負けたが次回まで、エリーナを預けるだけだ! 絶対に手を出すなよ! アルテ!」

「俺? つーか、次ってなんだ――」

「次は男だけの魔力で飛ぶハイエアートで勝負だ! これなら文句はあるまい」

「アルベルト様! 文句って、それは――」

「面白いな! そのレースのった!」


 のった! じゃなーーーーい!! なんで勝った方がのってるのよ!! 勝手に私を賞品にしないでよ!!

 私は必死にアルテの袖を引っ張る。


「アルテ、ちょっと」


「エリーナ、大丈夫だ。僕がちゃんと君を守る護衛(ごえい)をつけよう。それで、日時だが……」


 いや、あなたはお呼びじゃなくて……。


「エリーーーーナーーーー!!」


 なに、もう、この忙しい時に! って、この声、まさか……。

 声のした方に顔をゆっくりとむける。あぁ、やっぱり。娘溺愛の父親!!


「見つけたぞ、さぁ、家に! む、お前は誰だ! 可愛いエリーナと、ててててててててて手を繋ぎおって!!」


 父親、興奮しすぎです。手を繋いでこれだと、この先大丈夫なんですか……。


「アルテ様」


 今度はホークが前にすっと出てきた。え、何で? ホークって確か……。私達が殺されないようにって命令を受けてたんじゃなかったっけ? だから、前は殺気を感じないって、王子をスルーしてなかったっけ。


「あの者、アルテ様にものすごい殺意があります。いますぐお逃げください」


 父親ーーーー?! 殺意って! あー、もう。

 アルテはポリポリ頭をかきながら、「そうか」って笑ってるし……。

 私の告白タイムが台無しじゃない!!


「なんかよくわからんが逃げるぞ、リリーナ」

「……うん」


 ぎゅっと握った手を引かれ、私達は少し離れた場所にあるハイエアートに乗り込み、空を飛んだ。

 アルベルトがまだ何か叫んでいた気がするけれど、気のせいだろう。


「ルミナス達は置いていって良かったの?」

「大丈夫だ。言っただろう。アイツは王子だって。あとはアイツらで何とかするだろう」

「そっか」

「それで、どうする? リリーナ」

「ん?」

「トレジャーハントと腕輪を返す算段だよ」

「あ……」

「レースの練習の日を腕輪の返す方法探しか――。俺の腕輪も探さないとなー」


 私はさっきのタイミングを逃したせいか、言い出せずにいた。

 アルテと一緒に居たいって。好きだって……。


「とりあえず、今日は疲れただろ。晩飯は、よし! 肉のリベンジマッチだ!」

「好きだね……」

「肉は正義!」


 私はクスクス笑いながら、アルテに言った。


「今度は上手に焼いてみせる」

「おう」


 二人で笑いながら、隣街のいつものお家に飛んで帰った。

 お別れを覚悟してたのに、腕輪を返してもらう話はもう、ぜんぜん怖くなかった。


 ◇


「よっと」

「お、成功したな!」

「えへへ、あとは秒との戦いだね!」

「おう」


 家に帰って、祝杯の準備。今日は(自分的には)大成功。ルミナスは今頃、お城のパーティーでザイラの料理に舌鼓をうってるところかな。


「それでですね! アルテ、何で勝ったのに、私を勝手に賞品にするんですか!」

「あー、それはだな。よく考えてみろ。あの王子だぞ? また俺の国の民だからっつって、無理やりくるかもしれないだろ」

「むぐ、そうかもだけど……」

「だから、人前で、あー言っとけばレースが終わるまで手出ししにくいだろ?」

「あー」


 確かに、あれだけの人達が聞いていたのだ。約束を破るようなことはあまりしてこないかもしれない。もしかして、それが目的で、アルテは試合に乗った?


「でも、だからって」

「大丈夫だよ。あんなヤツに負けるつもりはない」

「うーん。負けたら私、お嫁にいかないとなんだよ?」


「勝ってもだけどな」


 アルテがポツリと小さく言った気がした。

 勝っても負けても……? でも、私まだ、やれてないことが!


「まだ、トレジャーハントのお宝コンプリート出来てないのに、困る!」

「あー、そうだったな。さっさとコンプリートさせないとな。ハンターキングさん」

「もー、めちゃくちゃ大事なところなんだからね!」


 そうだ、あと少しでコンプリートなんだ。だから、頑張らなきゃ。って、あれ? 話がどんどんあさっての方向に――。


「明日、拠点を変えるぞ」

「そうだね」


 いよいよ、父親にバレてそうだし。


「トレジャーハントの場所に近いところで用意しとくよ」

「うん! ありがとう」


 アルテは、私を見ながら笑っていた。


「本当に好きなんだな」

「え? 何が?!」


 何か、バレちゃった? 私の気持ち……。まさか!

 ドキドキしながら、アルテの次の言葉を待つ。


「宝物だよ」


 違ーう! あ、違わないけどーー!!

 やはり、ここはきちんと伝えておかないとだよね。


「アルテ、私ね」

「よっし、ごちそうさま」

「あ……」

「片付けるぞ、リリー……。名前、このままでいいのか?」

「あー」


 またしてもタイミングを逃してしまう。それに何だか今言うのはロマンチックじゃない。


「エリナでお願いします」

「まだ、もじっとくのか?」

「エリナがいい」

「……ん、そうか。わかった、エリナ」


 だって、本当の私の名前はそれだから。

 名前を呼ばれて、すごく嬉しくなった。例え彼から(いつわ)りの名前だと思われてても。


「ごちそうさま!」


 私も急いで片付けるために席をたった。

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