二兎を追う
「さすがだな、エリーナ! その魔力」
「お褒めいただき、ありがとうございます。アルベルト様」
「それに、お前も操縦の腕はなかなかだな。だが、僕は負けない。レースに勝つのはこの僕だ!」
アルベルトは、大きな声で宣言する。
「そして、エリーナ、アナスタシア、二人を僕の花嫁に迎える!」
「「「はっ!?」」」
私とアナスタシア、そしてアルテの声が重なった。
「アルベルト様、そのような、――お約束は?」
「どういうことだ?」
「どういうことよ?!」
アルベルトは、曇りのないキラキラした瞳で答える。
「アナスタシアの神聖力は国の為必要だ。エリーナは、僕の為に必要だ! それに気がついたのだ! 僕は、僕の気持ちを貫く!」
あー、うん。なんというか、清々しい。けど、それは、私、受け入れられません!!
「アルベルト様……」
「わかっている。けれど、これは命令だ! アナスタシアもエリーナもこの国の民ならば、僕には逆らえないだろう!」
わー、振り切っちゃった? かける言葉が見つからない。
悪役街道まっしぐら。メインヒーローがどうしてこうなった。
アナスタシアの心が揺れたのかハイエアートの速度が遅くなった。
「一気にいくぞ、かまってられん」
「うん!」
「おい、話を聞け――、アナスタシア! 魔力を。いや、――を!」
私はいつもより気合いをいれて魔力を注ぐ。絶対に負けないんだから!!
メイラ争奪戦レースだよね?
わかってる!
あの人が好きなの?
わかってる!
だからこそ、私は私の気持ちを守るため、私の応援したい人を応援するために、頑張るんだ!!
ぎゅっと、握りしめる。その手に、熱い力の流れを感じた。
「おい、なんか熱いぞ!」
「何だろう、熱い――」
私の肩に乗っている精霊達が大きな光を放ち手を繋いで飛び立った。
…………大きな鳥!?
ハイエアートを包み込むほどの大きな鳥になった二人の精霊はゆっくりとその身をハイエアートに近付ける。
すっと、ハイエアートに重なった瞬間、ものすごい加速がかかった。
「うぉ、何だこりゃ」
「うわ、ヤバいってヤバいってー」
叫びながら飛んでいたら、アルベルトが追い付いてきた。うそ、何で?!
「待て、なぜ神聖力を発動させたこのハイエアートと同じ速度がでるのだ!」
よく見ると、紺色の機体が淡い白の光に包まれている。アナスタシアが神聖力を発動させたようだ。
「まさか、エリーナもついに神聖力に!!」
違います、違います! これは精霊達が!
「なるほど、ならばアナスタシア、お前との約束は守れそうだな!」
「はい、わかりました――」
あー、これって私一人花嫁コースですか!? ごめんなさい、お断りですぅぅ!
「後ろのやつら、悲しいな」
前の二機とそれ以外の距離はどんどん離れていく。
「いや、今はそんなこと気にしてる場合じゃないですよね!?」
「そうだった」
いつものように笑う余裕のアルテ。私はそれを恨めしげに鋭い目で睨んだ。




