動かないのは私のせい?
「なんで、なんで動かないの?」
「む……」
アルテと私が乗り込み、ハイエアートに魔力を込めている。
けれど、それは何度やっても起動音をあげない。
「おかしいね?」
ルミナスも首を傾ける。
魔法核の接続部が私の方だけ光らない。
原因は私?
「何かあった?」
こちらに視線をじっとむけるルミナスにアルテはすぐ答えた。
「いや、何もないぞ? なぁ」
「あ、うん……」
この前から変わったことって、何だろう……。さらわれた?
確かに怖かったけど、ルミナスがいてくれたし。
じゃあ、トレジャーハント?
ちょっと苦労したし、お宝発見出来なくてがっかりはしたけど、別に何かあったわけじゃないし。
そのあとは……。
そのあとは、アルテの妹姫様への思いを聞いたことと、髪飾り……?
「リリーナ?」
「はいぃ!」
「今日は諦めよう。ルミナス、機体の確認をしておいてくれ」
「了解」
「ごめんね」
アルテに謝ると、何でだ? という顔をしてこちらを彼が見た。
「俺のせいかもしれないだろ? 気にすんな」
「でも――――」
このレースに勝たないと、アルテの思いが、妹姫様との結婚が……。
手を引かれて、機体から降りると、髪をわしゃわしゃと撫でられた。いや、何するの?! 髪の毛ぐしゃぐしゃじゃない!!
慌てて、髪を直していると、アルテは、大きな口で笑いながら言った。
「こういう時は、甘いモンだ!」
「え? え?」
「ルミナス、あと頼む。夕刻には戻る」
「いってらっしゃい」
手を引かれて、そのまま外に連れ出される。
レース、練習しなきゃ、約束だし……。
「なーに、深刻そうな顔をしてるんだ?」
金色の瞳が顔を覗き込んでくる。
「大丈夫だ。だから肩の力、抜くぞ」
「アルテ…………。そう……だね……」
私は横に立ち、早足の彼に追い付くため足を動かす。
あれ、でも今日はなんとなく、ゆっくりしてる?
「ほら、いくぞ」
「うん、何処に行くの?」
「甘いモンか。そうだな……」
◇
スイーツショップ――カフェ・満月の湖
「いらっしゃいませー!!」
扉を開けると元気な声が響いた。
「二人だ」
「はーい、こちらにどうぞー!」
青色の髪の女の子二人がテーブル対応をしている。
「八番オーダー」
「はーい」
キッチンでは、金髪のお兄さんが担当のようだ。表に出てきた時に黄色い声が上がる。
金髪のお兄さんはウィンクをして、またすぐ奥に戻っていった。
「今日はオウ様が表担当の日だったのね」
「私はハー様推しですが、オウ様も素敵よね!」
「今日はクー様いないのー!?」
テーブルのまわりからはそんな声が聞こえてきた。女の子達はどうやら、スイーツの他にキッチン担当さんがお目当てだったりもするのだろうか。
「決まりましたらお呼びください」
ウェイトレスの女の子はメニューを置いて去っていった。
「うわぁぁー、どれも美味しそうですね」
「すげぇな、宝石みたいだ!」
アルテの目がキラキラしている。もしかして、甘いもの好きだったりする?
「アルテ、甘いものが好きなの?」
「おう、好きだぞ。まあ、こんな場所で食うことがないからもっぱら自作だが、シンプルなスポンジ生地を焼くくらいだ。芸術だな、こりゃ。全種類……は、さすがに無理か」
本気で悩んでいる彼が、凄く可愛く見えてしまった。ハチミツ大好きクマさんですか。
「じゃあ、私は別のを頼むから、わけっこしよう」
「いいのかっ!? あ、や、でも」
「いいよ。アルテが嫌でなければ」
「そうか、じゃあ俺はここからここまで――」
そう言って、メニューの半分近くを選ぶ。それ、全部入るの?
「アルテ、いくら甘いものは別腹でもそれは――」
「む、そうだな。うーむ」
「また、来ればいいじゃないですか――」
妹姫とのデートで、という言葉は私の口から出ていかなかった。アルテはしばらく悩んだあと決めたと言って、三種類のケーキに絞っていた。
「じゃあ、これとこれとこれだ」
「私はこれで」
私は二種類のケーキを選び、ウェイトレスを呼ぶ。
「はい、では五種類のケーキと珈琲、紅茶ですね」
「お願いします」
「しばらくお待ち下さい」
オーダーを終えて、アルテの方を向くと嬉しそうに彼は笑っていた。こんな笑顔を見れるのは、あと何回かな。そう思っていると、アルテが話しかけてきた。
「次は季節限定物があったからそれだな。全種類制覇付き合ってくれよ」
ドキリと心臓が跳ねた。次も、私でいいの? 全種類制覇って。
私はアルテの考えがわからない。
「これからって、でも、飛べない相棒なんて用なしだよね。急いで新しい相棒を探さないと、もうレースまで時間が――」
「まだ決まった訳じゃない。それに、リリーナのこと、ほっとけないだろ。なんとかなる、なんとかなる」
かかっと彼は笑って、他の相棒を探すのを否定してくれた。
「お待たせしましたぁ」
「おぉ、すげぇ!」
「わー!すごい」
ウェイトレスの女の子が持ってきてくれたケーキは宝物みたいにキラキラ輝いて見える。
「ごゆっくりどうぞ」
ペコリとお辞儀して女の子は次のテーブルに向かう。
「甘いモン食えば、調子がもどるかもよ! どれからいくか?」
「じゃあ、私はこれを」
「よし、半分に切り分けるか。勿体ないが、やるぞっ」
アルテは、さくりと、ケーキを切り分ける。前と後ろに。
「ちょっと、これは……」
「ん、何だ?」
大きさに、差が……。あーもう、雑なんだから。
「私はこちらをもらいます」
「なん……だと!」
私は大きい方をさっとさらう。これは私が頼んだケーキですよ!
少ししょんぼりしながらアルテが小さい方を自分の皿に引き寄せていた。
「アルテ」
「なんだ?」
「ありがとう」
「? おう」
わかってないっぽいけど、まあいっか。
私、アルテが好きだ。
だからって、邪魔しちゃダメだよね。私が原因だったら、相棒を代えてもらおう。
残り四つのケーキは私が半分に切り分けておいた。




