第四章 30
日が暮れる前にキリア山の麓に到着した。
山への入口には、兵士が警護のために使っていた小屋が残されたままで、その脇に祠へ登っていく道がある。
祠への道は広くて整備されていたので、そのまま馬に乗って途中まで登っていくと、広場のような場所に着いて馬を降りた。
ここからは石を積んだだけの階段を歩いて登っていくようになっているので、馬から降ろした荷物を担いで階段を登っていくと木々が生い茂り階段はその陰でかなり薄暗く感じる。
(なんか見覚えのある景色だな・・・)
(ここに来たことがあるのか?)
(いや、無いとは思うんだ。許可が無いと入ることは出来なかったんだし父さんや母さんからも絶対に行ってはいけないと言われていたから。でも、なんとなくそんな気がするんだよな)
百段以上あるのではないかと思う長い階段をゆっくりと登っていく、人や魔物の気配は全く無く夜になって暗くなると気味が悪いのではないかと思うほどだ。
(そろそろ祠に着いてもいいと思うんだけどな・・・)
上を見上げると階段の終わりが見えた、少しペースを上げて一気に登りきるとそこには石を積み上げて造られた門と奥に大きな穴が見える。
(やっぱり来たことがあるような気がする、小さい頃に母さんに連れてこられたような)
(入ることは許されていないし、サントから歩いてくるとなるとかなりあるぞ)
(うん、でもこの景色・・・最近、母さんに連れてこられた夢で見たような)
(その時、中は見たのか?)
(いや、まだ幼くて暗い穴の中に入るのを怖がって入らなかったんだ。でも母さんは僕に見せたいものがあるって言っていたな)
(そうか、その見せたい物が残っているかはわからないけど中に入ってみよう)
石の門をくぐって穴に近づいたとき人の気配を感じて横を見た。
「ロザイル、ロザイルじゃないか」
「ラミル、待っていたよ、ムーラがラミルがもうすぐここに来るから待っていろって」
「僕もジラルさんがザハールの町でロザイルを見かけたと言っていたから探していたんだ、ムーラは一緒じゃないのか?」
「ムーラはまたどこかに行ったよ、もう俺に教えることはないって」
「そうか、じゃあかなり腕を上げたってことだな」
「ああ、月の槍の術も使いこなせるようになったし、足手まといにはならないと思うよ」
「そうか、それは心強いな、ところでこの中には入ってみたの?」
「何も無いよ、何か壊れたかけらみたいな物が散乱しているぐらいかな」
「そうか、でも、僕もちょっと見てくるよ」
ラミルは穴の中に入っていったがロザイルの言っていたように祠の中には壺と思われる物のかけらが散乱し、祭壇の近くに神器が祀られていた棚のようなものがあるだけだった。
(本当に何も無いな)
(やっぱり来ても意味がなかったのかな?それにしても、母さんが言っていた見せたい物って何だったんだろう、神器を見せたかったのかな、それとも似ているけど違う場所だったのかな)
ラミルは祠の穴から出ようと入口の方を振り返った。
(あの夢の場所はどこなんだろう、それに何を見せたかったんだろう)
(なあラミル、ちょっと考えてみたんだけどさ、ここに神器が祀られていたと言われていたけど、太陽の剣となる大地の剣はムーラが持っていて主に預けて森の泉に隠されていた、と言うことはここに祀られていた剣は偽物ということになるよな。それなのになぜここが襲われたんだ、やはり壺を破壊することだけが目的だったんじゃないかな)
(そう言えば確かにそうだね、そうなると母さんはわざわざ王様の許可を取ってここに来て偽物を見せたいなんて言ったのかな?母さんも偽物だと知らなかったのかな?)
ラミルは穴の入口をもう一度良く見た。
(あれ?夢で見た穴と何か違うぞ、小さい頃見た穴だから大きく見えて同じ穴かと思ったけど、母さんの背丈から想像するともっと小さい穴だよ、こんなに大きな穴じゃない)
(他の場所ということか、でも同じような階段がある祠なんてサントの近くにあるのかな?)
(いや、階段の記憶は確かじゃないよ、登ったような気がしていたのかもしれない、でも夢で見た穴とこの祠が違うのは間違いない)
(そうか、それならここにはもう用は無いな、ロザイルとワルムへ行ってバルマを説得しよう)
ラミルが穴から出ようと歩きだすと外からロザイルの声がした。
「お、お前たちはシチラの兵士」
(なに、シチラの兵士だって、急ごう)




