第四章 29
翌朝、ラミルはまだ起きていない王様に代わって王子に挨拶を済ませると、ジラルから薬を受け取ってキリアへ向かった、ザハールからキリアの祠へ向かうには、途中でどうしてもサントの近くを通らなければならない。
(なあラミル、本当に父さんやレイラに会っていかなくていいのか?)
(うん、確かに心配してくれているだろうけど、会えばまたレイラは離れるのを悲しんで泣くだろうし、何よりもそれが一番辛いから)
(そうか、そういうことか、それなら先を急ごう)
サントの近くまで来たところで、ラミルはおかしなことに気がついた。
(ところで、なぜサントが襲われたんだろう、ガルディアはジゼルの子孫を抹殺するために、シーバやハンを襲ったと言っていた。恐らく祠は封印された悪魔を復活させるためと神器を奪うためだろうけど、今ここに太陽の剣となる剣はあるし月の槍もロザイルが持っている)
(そうだな、そういわれてみると変だな、もしかしてサントにジゼルの子孫が居る、つまりラミルが居ることを知っていたのか?)
(いや、それならあの時のザギルの言葉はおかしい、ザギルは僕のことを知っているはずだし、ガルディアが僕を知っているなら話しているだろう)
(もしかしたらサントにまだ何かあるのかもしれないな?寄ってみるか?)
ラミルはサントに寄ることにした、馬を近くの木に繋いで村の廃墟の中を歩いてみるが村の中には特に変わった様子もなく、ラミルは自分の家の前までやって来た。
(何度見ても嫌な気分になるな・・・)
呆然と家の残骸を眺めていると、鎧にコツンと小石が当たった。
「誰だ」
ラミルが剣に手をかけて後ろを振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。
「バルマ、お前・・・どうしてここにいるんだ、ワルムから出たら危ないぞ」
「なんだよ、戦士になって偉くなったからって、まさか説教する気じゃないだろうな」
「そんなつもりはないけど、魔物が出るかもしれないし先生に見つかったら大変だぞ」
「平気だよ、最近はこのあたりには魔物は出ないらしいんだ、俺は何度もここに来ているけど一度も遭遇してないぜ」
「そうなのか?でもいつ出るかわからないし・・・ところでここへは何しに来ているんだ」
「お前、ジゼルって国を知っているか?」
「ジゼル、ああ知っているよ、セラム山を越えたところにあったという国だろ」
「ああ、実は俺はそのジゼルの末裔なんだ」
「なんだって?」
「お前が王宮に行ってから、一度学校に来たことがあっただろ、その夜、親父に聞いたんだ」
「本当なのか?」
「ああ、聖戦士の話は学校の歴史の本を読んで知っていると思うけど、レミルって実は神様なんかじゃなくてジゼルの国王だったらしいんだ」
「それで?」
「俺はレミルの子孫なのかって聞いたら、子孫ではないけれどジゼルの呪術師の末裔らしい」
「そうか、お父さんは魔導師とかって言ってなかったか?」
「いや、魔導師っていうのがいるっていうのは聞いたことがあるけど整術師ってやつで、兵士の怪我とかを治す魔法を使うことができたらしいんだ、でもラミル・・・お前も詳しいな」
ラミルは背負っていた盾をはずすとバルマに差し出した。
「なあバルマ、この盾持ってみてくれないか」
「なんだよ、急に、持てばいいのか」
バルマは盾を軽々と持ち上げた。
「なんだよ、この盾、凄い頑丈そうな造りなのに、驚くほど軽いな」
「そうか、どうやらジゼルの末裔って話は本当みたいだな」
「え、この盾と関係あるのか?」
「お前がジゼルの末裔だと言うのが本当だから話すよ、実は俺もジゼルの末裔だ」
「ラミル・・・お前もなのか」
「しかも、俺はさっきお前が話していたレミルの子孫だ」
「ほ、本当に?冗談だろ」
「その盾はセラム鉱石という石で造られた物で、ジゼルの末裔の者が持てばとても軽く感じるけど、そうでない者が持つと、とてもじゃないが重くて扱うことができない物なんだ。そしてジゼルの王家のみに許された力がこれさ」
ラミルは剣を抜いた。
「これは大地の剣と言って、王家の血族の証さ」
「大地の剣か、そういえば王家の血を継ぐ者が持つと光輝く剣があるって親父が言っていたな、確かに緑色に光っている。お前って昔から凄いって思っていたけど、本当に凄かったんだな」
「俺も、まさかお前が俺と同じジゼルの末裔とは思わなかったよ」
バルマに他の町や村で見てきたことや起こったこと、ジゼルの呪術やジゼルの国の話もした。
「そうか、ジゼルの末裔が狙われているのか。そうだとすると俺がワルムにいるのは危険なのかな?居るってわかってしまったら、この村みたいに襲われてしまうのかな」
「バルマ、お前、剣に自信あるか?」
「お前に聞かれて自信があるなんて言えるかよ、お前がいなくなってからは学校で1番だけど」
「そうか、良かったら俺と一緒に行かないか?お前が整術師の呪文を使えるようになったら、これからはもっと戦いやすくなる」
「一緒に悪魔退治にか?他の町や村に行ってみたい気もするけど、戦うことになったらきっと足を引っ張るような気がする・・・」
「最初はそうかもしれないけど戦いに慣れてくれば平気だと思う。それに、お前は戦わなくても整術師として呪術を使えるようになってくれれば重要な戦力になるんだ」
「少し・・・考えさせてくれないか。ラミルの言うことはわかるけど、いきなり戦いに行くなんて無理だと思うんだ。学校で1番になったと言っても、きっとお前の足元にも及ばない」
「わかった。俺はこれからキリア山の祠に行くつもりなんだ、その帰りにワルムに寄るから、それまでに決めてくれないか。それから、この本を読んでおいてくれ」
ラミルはウルトで貰った本を差し出した。
「この本にはジゼルの呪術などが書かれている、とても大切な本だしジゼルの末裔でない者に見せてはならないって書かれているけど、もし整術師として戦いに行く決心が着いたときには知っていなければならないことだと思う、もちろん書かれている呪術をすぐに全部覚えるのは無理だろうけど読んでおいてほしい」
「わかった、読んでみるよ」
「バルマ、他の奴にはジゼルの末裔だってことは言うなよ、もちろん俺のことも」
「わかった、それにラミルがレミルの子孫なんて言っても誰も信じないだろうけどな」
「それから、レイラにもここで会ったことは言わないでくれ」
「驚かせたいのか?」
「いや、そういうわけじゃない・・・そろそろ行かないと、ワルムの近くまで送って行こうか?」
「いや、平気だよ、ラミルこそ気をつけろよ」
「ありがとう、たぶんワルムに行くのは明日になると思うけど、よく考えておいてくれよ」
ラミルは馬に跨るとバルマに手を振って、キリアへ向かった。




