第四章 28
ロザイルを探すのを諦めて王宮の近くに戻ってくると、入口付近で女性の悲鳴が聞こえた。
ラミルは慌てて走っていくと、兵士の剣を奪った若い女性が剣を振り回すようにして兵士に襲いかかっていて、剣を取られた兵士は盾で防戦するのに必死になっている。
「おい、やめろ、何をする」
「うるさい、アルムの王を殺せば、アルムの王を殺せば・・・」
まるで譫言のように叫んでいるが周りに集まった兵士も女性を殺すわけにいかず、ただ手を拱いているだけだ。
(健人、まさかウズルの男たちと同じ術をかけられているんじゃないか)
(そうかもしれない)
ラミルは兵士たちをかきわけて女性に近づくと、後ろに回りこんで剣を持っている手を掴み、首筋に手刀を入れて女性を気絶させた。
「ラミル様、何を」
「大丈夫です、ちょっと気絶させただけですから」
剣を兵士に返して女性の気を取り戻させる。
「わ、私は・・・いったいここで何をしているのでしょう、ここはどこなのですか?」
「ここはザハールにある王宮の入口です。あなたは何故ここに居るか、いったい何をしたのかまったく覚えていないのですね?」
「覚えていません、私はいったい何をしたのでしょうか」
女性は動揺して泣き出した。
「あなたはあの者の剣を奪って襲いかかったのです」
「そんな・・・」
女性は大粒の涙を流して震えている。
「大丈夫です、私はあなたを責めるつもりはありません、覚えていることを話していただきたいだけです。私はラミルと言いますが、あなたはシチラの方ではありませんか」
「はい、シチラのロサと言います。でも何故私がここに・・・本当に何も覚えていないのです」
(やはり催眠術のようだ、くそっ、女性を使って油断させるなんて卑劣なことをする)
「わかりました、シチラでのことで何か覚えていることを話してください」
女性は大声を上げて泣くことは無かったが、声にならない声でゆっくりと話しはじめた。
「ある日、町の男たちが私の家にやって来て、無理やりガルディアの元に連れていかれました。私だけでなく近所の女性、それから子供もいました」
「私はまだ独り身なので身よりはないのですが、子供を人質に取られている女性もいます」
「そうですか、あなたはもうシチラに戻る気は無いと思っていいですか?」
「はい、あんな恐ろしい町には2度と戻りたくありません」
「私も少しだけシチラのことは聞いて知っています。できればもう少し知っていることを話していただきたいのですが」
「ガルディアは老人を除く者を全て屋敷に連れていき男たちは兵士、女たちは給仕、特に若い女性たちは兵士たちの慰み者として扱っています。子供たちは人質として囚われているので母親たちは拒むことができないのです」
「ひどい・・・」
「私も同じように扱われるのが嫌で監視の目を盗んで命を絶とうとしたのですが、兵士に見つかってしまいザギルという男のもとに連れていかれましたが、そこからは記憶がありません」
「わかりました、辛いのに色々と話を聞かせてもらってすみません」
ロサはまだ涙を浮かべた。
「私はその方を剣で襲ってしまった、いったいどうしたらよいのでしょうか?」
「心配はいりませんよ、ロサさん、あなたはただ操られていただけのようです。私はあなたがこの町に住めるようにしますので、安心してください」
ロサは力が抜けて座り込んでいたが、ラミルの言葉に嬉しそうに頷いている。
ラミルは近くの兵を呼び寄せた。
「この方の住む場所と仕事を探してください、わたしから王様には事情を話しておきます」
「はい、かしこまりました」
ラミルは女性を兵士に預け、再び王の間に言って事情を説明した。
「シチラではそのようなことが起こっているのか、ガルディアの奴、なんと卑劣な」
「また同じようなことが起こるかもしれません、王様も十分に注意してください」
「わかった」




