第四章 25
陽が沈む頃に谷を抜けると、いっきに馬を走らせた。
谷を抜けると蛇や熊の魔物と遭遇した、雷の剣を手に入れたラミルの敵ではなかったが夜も更けてわずかに灯るアンの町の光が遠くに見えたとき、新たな魔物に遭遇した。
(おいラミル、魔物とは違うが嫌な臭いというか変な臭いがしないか?)
(うん、なんか甘いような、すっぱいような・・・)
馬を止めてあたりを見回すと、月明かりの中に何かの大群が飛んでいるのが見えた。
その大群はラミルに接近してきている。
(なんだ・・・何かいる、こっちに向かってくる)
慌てて馬をおりてよく見ると、小さく見えていたので魔物は遠くにいると思っていたがラミルのすぐ目の前まで迫って来ていた。
(な、なんだ、こいつら・・・蝶のような・・・)
大群は蛾の魔物のようだ、数十匹はいる。
(まずい、囲まれたぞ・・・)
そう思った途端、何やら眩暈がしてきた。
(なんだか目がおかしい・・・ぼやけている)
(毒にやられたか?もしかしたら羽から毒を出しているかもしれない、早く倒さないと危険だ)
だが目が見えにくくなってきていて視界がぼやけて敵をうまく捉えることができず、剣を振り回してなんとか攻撃を避けることしかできない。
(おかしいな・・・蝶とか蛾が暗い中でこれだけ動くなんて・・・)
健人は何か自分に襲いかかってくる原因があるのではないかと考えていた、そして健人は背中でロムが作ってくれた剣が輝いていることに気付いた。
(原因はこれか!)
ラミルはロムが作ってくれた剣を抜いて左手に持った、剣は青白く輝きを放っている。
(この光が原因だ、ロムはこの剣にいったいどんな力を込めたんだ?)
(ラミル、2本の剣で戦うぞ、ここは僕にまかせて)
健人は左に持った剣の光で魔物をおびき寄せるようにしておいて、近づいてくる蛾の魔物を少しずつ倒していくが、あまりの数の多さに全滅させられない。
(だめだ、ますます目が見えなくなってきた・・・まずい)
左手の剣が輝きを増した、その光におびき寄せられるように近寄ってきた魔物が次々と凍りついて地面に落ちていく。
(なんだ?)
健人は左に持った剣を大きく振り回してみると、剣の周りの空気が凍って幕をつくり、それはまるでダイヤモンドダストのように月明かりでキラキラと輝いている。
その氷の幕に触れた魔物たちは次々と凍りついて地面に落ち、落ちた衝撃で羽が砕け散っていく、やがて全ての魔物が砕け散ると氷の幕が消えた。
(凄い、この剣の呪術は敵を凍らせることができるらしい)
ラミルは急いで袋の中から薬を手探りで取り出して飲んだ、その場にうずくまるようにして休んでいると、薬が効いてきたのか目の前が少し見えるようになってくる。
(まだ少し頭が痛いな、すぐには元に戻らないみたいだ)
(かなりの毒を吸い込んだみたいだ、もう少し目が見えるようになるまで休んでからエストに向おう)
さらに薬が効いてきて半時ほど経つと、ようやくはっきり見えるようになった。
(よし行こう、遅れてしまった分を取り戻さないと)
(ラミル、焦ってはだめだ、薬は効いたけど疲労もたまっている。とりあえずアンに寄って朝を待ってからにしよう)
(でも、それでは・・・)
(今の状態で魔物と遭遇するのは危険だ、体力を回復させてからの方がいい)
(わかった、健人の言うとおりにするよ)
ゆっくりと馬を進め、明け方近くになってアンにたどり着いた。




