第一章 8
「ずいぶん熱心に読んでいるようね」
「うん、まあね」
「でも、なんで急に聖戦士様に興味を持ったの?今までは全く興味が無さそうだったのに」
「なんとなくね」
うまく説明できないので、適当に答えるしかない。
「ラミルがあんなに真剣に本を読んでいるなんて、嫌なことが起こらないと良いけど」
そう言ってクリシアが笑うと、ラシンドもつられて笑い、レイラも口を押さえて我慢している。
「ところでお父さんはあの本を読んだことあるの?」
「いや、あんな本があるなんて知らなかったよ」
「お母さんは?」
「読んだことはないけど、どんなことが書かれているかぐらいは小さい頃に母さんのお婆さんから聞いたことがあるわ」
「じゃあ、ひとつ聞いて良いかな。教科書には聖戦士様は4人と書かれているのに、あの本には3人のことしか書かれていないけど、どうして?」
「レミル様のことかしら、そのうち出てくると思うわよ、聖戦士様は3人で戦っていたらしいけど、途中でレミル様が現われたらしいわ」
「なるほど・・・」
「そういえば前に話したかもしれないけど、あなたの名前はレミル様からとったものなのよ」
「へえ、そうなんだ」
英雄と同じか、似たような名前をつけることはよくある話だと思った。
「半分以上読んだけど出てこないから、レミル様のことは書かれていないのかと思った」
クリシアは勉強嫌いのラミルがあの本をたった一晩で半分も読んだと聞いて驚いた。
健人は夕食を済ませると部屋に行って続きを読み始めた、すっかり本に夢中になって遊んでもらえないレイラは隣のベッドで不機嫌そうにしている。
「レイラごめんね、たぶん今夜には読み終わるから、明日は遊んであげるから」
「え~、明日?つまんないよ~いやだ~」
そう言って頬を膨らませた。
「まったく、しかたないな~」
健人はそう言ってレイラの相手をした、少し遊んであげると眠くなってしまったのか眠ってしまったので、起こさないように蝋燭の灯りを少し暗くして蝋燭の傍で続きを読みはじめた。