第四章 17
家の裏手に回ってみると小さな小屋のような建物があり扉が開いている。
(今度は開いているよ、これって入れってことかな?)
(儀式をやるところとか言っていたよな、なんかこっちの方が不気味だな)
(だけど呪術について何かわかるかもしれないし、僕も気乗りしないけど入ってみようよ)
恐る恐るラミルは小屋に入った、正面に小さな祭壇があり燭台だけが残されている。
辺りを見回しながら祭壇に近づこうとしたとき数人の声がした。
ラミルよ、良く来た、我々はお前が来るのを待っていた、そこに座りなさい。
ラミルは驚き、尻餅をつくように祭壇の前に腰をおろした。
ラミル、そして健人よ、お前たちはこのジゼル王家の血を継ぐ者。
「あ、あなたたちはいったい・・・?」
我々はジゼル歴代の王、魂はいまだこの地下にあり王家の血が絶えないように見守っている。
アルムで起こっていることも我々にはわかっている、悪魔と戦うのはお前たちの宿命だ。
しかし、お前たちの剣と呪術の力は、まだまだレミルの足元にも及ばぬ。
王位継承者が受ける試練の間に行き、剣と呪術の腕を磨いてくるがいい。
「試練の間?」
突然、祭壇の下の扉が開いた。
何も恐れることはない、己の力を信じて目の前に現われる敵を倒せばよい。
さあ行けラミル、健人、ジゼルの王となるがいい。
声は聞こえなくなった、扉の奥は蝋燭の明かりが灯り、明るくなっている。
ラミルは立ち上がって祭壇を見つめた。
(健人行こう、ジゼルの王になれるかどうかわからないけど、試練なら望むところだ)
(そうだな、どうせ今のままじゃ悪魔どころか悪魔兵になったザギルにも勝てないって言われたんだ。ロザイルも修行している、僕たちも試練を受けて力を付けよう)
ラミルは大きく息を吐いて扉の中へ入った、試練の間への道は細く、緩やかに下る坂道が続いていて奥へ進むにつれて道幅は徐々に広くなってきている。
ラミルよ、心の準備は良いか?
これからお前が相手しなければならないのは、悪魔や魔物ではない。
レミルが王子だった頃、ジゼルの兵士はアルムや近隣のどの国の兵より強いと言われた。
その兵士たちの幻だ、しかし、幻とは言っても剣で斬られれば怪我をするぞ。
人を殺すなどと考えず、その幻と戦って倒すのだ。
「わかりました」
試練の間へ続くという道を降りていくと、王家の紋章が描かれた大きな扉が目の前に現れた。
ラミルは覚悟を決めて扉に手をかけると一気に押し開いて部屋の中を見回した、中はアルムの王宮の間よりもはるかに広い。
「これが試練の間か・・・」
ラミルが部屋に入ると扉が閉まり、目の前に兵士が現われた、剣を構えて威嚇している。
「ジゼルの王位をかたる偽者よ、私が相手だ、さあ剣を抜け」
ラミルは大地の剣を抜いたが、全く輝いていない。
剣の力は封印させてもらった、もちろん相手の兵士も呪術は使わない。
ラミルよ、そなたの剣士としての実力を試させてもらう。
それから、健人の力も封印させてもらった、ラミル、お前1人の力を見せてもらう。
「剣や健人の力を借りなくても、今まで健人から学んだ力を見せてやる」
ラミルは、剣を両手に持って中段に構えた、今まで幾度となく健人と共に戦う中で、すでに健人の動きをマスターしつつあった。
兵士がジリジリと間合いを詰めはじめた、さすがに不用意に攻撃はしてこないが、幻とはいえ相手を倒そうという重圧を感じる、ラミルも臆することなく、すり足でゆっくりと間合いを詰めていく。




