第四章 16
サーの家に用意されていた食事をとると、すぐさまジゼルに向かうために馬に乗った。
ジゼルへの道はサザルからの道よりも広く、整備されているので馬を走らせた。
時折、数羽の死鳥がラミルの上空を飛び交ったが襲ってくることもなく、聞いていたよりも早く入口と思われる石門に着くと言われたように馬をおりて荷物を担いで石門をくぐった。
(ここがジゼルか、なんの問題も無く通れたけど本当に呪術に守られているのかな?)
(わからないけど、本当に人の影も動物も一切いないみたいだ)
まわりの景色を見ながら歩いていくと当時のままと思われる家が建ち並ぶ場所に出た。
(ここが中心かな、本当に小さい国だな・・・確かにザハールの町と広さは変わらないな)
ほぼ中央と思われる場所にサーが言っていたような少し大きめの家を見つけた。
(あれが王家の家みたいだな、確かに城というよりもただの家だ、入れるかな?)
(とりあえず行ってみよう)
ラミルは家の前に立ってドアを見た、そこには腕輪と同じ紋章が掲げられている。
(ここで間違いないみたいだ、入ってみよう)
ドアを押したり引いたりしてみたが鍵がかかっているようで開かない。
(入れないか・・・しかたない、まわりを見てみよう)
入るのを諦めて歩き出そうとした瞬間、鍵の開くような音がした。
(おい、なんか音がしたぞ)
ラミルは再びドアに手をかけて押してみると今度は大きな軋み音を出してドアが開いた。
(誰かが鍵を開けてくれたのかな?)
「すみません・・・誰かいるのですか・・・?」
部屋の中からは何の反応もなく、人の気配は全くない。
(なんか気味悪いな・・・)
(なんだ、ラミル、怖いのか?でも何かわかるかもしれないし入ってみようよ)
ラミルは足を踏み入れた、外の光が入っているため部屋の中は明るい。
(なあ健人、この部屋って何年も人が住んでいないはずなのに埃がまったくないし、とても綺麗に片付けられていると思わないか)
(確かにそうだな、やっぱり誰かいるんだよ、何百年も経っているのに綺麗すぎる)
「すみません、誰かいませんか」
再びラミルは声をかけてみるが反応は無く、隣にも部屋があるようなので探しながら入って行くと壁にはとても美しい女性の絵がかけられている。
(綺麗な人だな、この人がアーシャ様かな?)
(うん、でも誰かわからなくても、ここにあるってことは王家の人なんだろうな)
ラミルは絵に向かって深々と頭を下げた。その後、全ての部屋を見て回ったが結局は誰もおらず、これといった手掛かりもない。
(これだけ綺麗になっているのだから誰かがいると思ったんだけどな)
(呪術で結界が張ってあっても、まさか部屋まで綺麗にはならないだろうしね)
(近くにジゼルの民が住んでいて片付けに来たりしているのかな?)
ラミルはそんな疑問を抱いたまま家を出てゆっくりとドアを閉めた、すると鍵が閉まるような音がしてドアを押しても開かない。
(なんか不気味だな、ジゼルの亡霊の仕業かな・・・)
(なんだよ、亡霊って?)
(亡くなった人の魂のことさ、そういう意味だとムーラは亡霊になるな)
(なあ、亡霊って怖いもの?)
(まあ・・・僕はちょっと苦手・・・)
(なんだ、健人だって結構怖がりじゃない)
(そういえば隣に儀式を行う建物があるって言っていたな、どれだろう)
誤魔化すように健人が話を変えたのでラミルは可笑しくなった。




